マーチンゲール

(注.マーチンゲールとは、負けても倍額をベットし続ければ、いつかは勝って挽回できる、という戦法。実際にはカシノにはマキシマム・ベットがあるので、10連敗=1024倍あたりで間違いなく破綻する)

これも先日のマカオの話であるが、私自身のギャンブルに向かう姿勢の弱さが如実に現れたゲームがあった。

場所はサンズ。ちょうど新しく開いたばかりのバカラテーブルで、当然カードも使い初め、チュ・チャイ(マカオでこれまでの出目を表示する牌)も真っ白である。私の左側にtagamanさん、あけみんさんご夫妻が、右隣に中国人の若い2人組が座ってゲームが始まった。私は見、あけみんさんは例によってプレイヤー、中国お兄さんはバンカーである。もちろん、プレイヤーが出た。次のゲームでもやはりプレイヤーが出た。

中国兄はここで1200$のベットをバンカーへ。はた、と考える。中国兄は確か最初はミニマムの300$、その次は600$で取り戻しに行ったのではなかったか。この回はタイ。全員置き張りで、次回もまたプレイヤー。ツラをみてわらわらと人が集まってくる。みんなプレイヤー張りだが、中国兄は意地なのかバンカーに、今度は2400$のベット。マーチンゲールである。

こうなると、なぜか賭けられないのである。ツラに乗り遅れたということもあるが、縁もゆかりもないこの中国兄に感情移入してしまうのである。当然、この回もプレイヤーが出た。tagamanさんも、あけみんさんも順調にチップを増やしている。「TAIPAさん、何で賭けないの~?」「いや、あの人がね、ずっと倍倍で賭けてるから、賭けにくくて。」さっきからみていると、プレイヤーはナチュラルか悪くても6、バンカーはバカラとか2とか3とか絞るまでいかないひどい状況である。あの中国兄の裏を張れば、ほぼ確実に勝てる、とは思うのだが・・・。

中国兄は4800$にベットアップした。知り合いなのか、100$チップが何枚か重ねられる。他の賭人はすべてP、彼は一途にBである。だがここも、気合を入れるまでもなく2ピン3ピン。プレイヤーの勝ちである。中国兄は席を外した。これで流れが落ち着くだろう。さて、そろそろ参加しようかと思っていたら、彼は戻ってきた。1000$札10枚が卓に投げられる。10000$を当然バンカーへ。

見を続ける私以外全員が敵である。プレイヤーは6スタンド、バンカー1か2で勝負は3枚目に持ち込まれたが、「コン」の大合唱に対し彼が絞ったのはモーピン、やはりプレイヤーの勝ちであった。彼は再び立ち去り、そして2度とそのテーブルに戻ってくることはなかった。

10000$といえば、日本でも家族4人の1ヵ月の食費+公共料金くらいにはなる。中国の物価なら、さらに価値があるだろう。まして、彼は10000$ベットの前にすでに10000$近くを負けているのだ。もちろん中国人でも、懐に余裕のある人はいくらでもいるのだろうが、彼はどうだったのか、などと考えてしまう。ギャンブラーにはあるまじき、心根の弱さといわなくてはならない。

その次のゲーム、全員プレイヤーに対し、私はひとりバンカーに張った。多少の確信はあったが、自分としては太めの1000$ベットにとどめた。それ以上賭けると、中国兄の流れを引き継ぐことになるだろうと思ったからだ。もちろん起こしたのは、ナチュラル9である。

[ちょっと記憶があいまいなので、PB逆かもしれません]

[May 26, 2005]