アイキャッチ画像:自ら撮影したデラホーヤvsホプキンス@MGMグランド

ワルーエフとタイソンどっちが強い?    パッキャオvsモラレスⅢ
デラホーヤvsメイウェザー    内藤vsポンサク    パッキャオvsバレラ


ワルーエフとタイソン、どっちが強い?

WBA世界ヘビー級タイトルマッチ(2006/10/7、イリノイ州ローズモント)
ニコライ・ワルーエフ O KO11R X モンテ・バレット

210cm150kgの大巨人ワルーエフが、善戦健闘したバレットを押し切って11Rでストップした。とはいえ、ワルーエフの欠点であるナックルで正確にパンチを決められないという癖は克服できた訳ではなく、適確に強打を決めていたのはむしろバレットの方だった。もっともあの巨体でナイスショットしてしまえば、相手が誰であれ11回まで立っていられないのではあるが。

じりじりと前進してワンツー主体に攻めるワルーエフに対し、バレットはいきなりの左右フックをスイング気味に振るう。中にはみごとに決まったパンチもあったのだが、脂肪の厚いワルーエフは全くひるまない。ラウンドが進むごとに、芯ではないにせよ食らっているパンチのダメージと、自らの大振りによる疲れで、バレットは肩で息をするようになる。最後は、倒れたいのだがいいのを決めてもらえないという感じで立ち上がっているうちに、セコンドがリング内に入ってレフェリーストップとなった。

ワルーエフの強みは、あの巨体にもかかわらず12ラウンド戦うことのできるスタミナである。以前にも150kgクラスのヘビー級ボクサーはいたが、自らの体を支えるだけでスタミナを食いつぶしてしまい、世界ランク上位に進む例はほとんどなかった。ワルーエフは過去に何度もフルラウンド戦っているし、この日の後半戦も動きは鈍っていなかった。

現在、世界の主要4団体のヘビー級チャンピオンはWBAワルーエフ、WBCマスカエフ、IBFクリチコ弟、WBOリャコビッチとすべて旧ソ連圏のボクサーであるが、この中でもワルーエフはクリチコ弟と双璧といえそうだ。また、私が試合を見た中でオールタイムベストボクサーを選ぶとすれば、ヘビー級では80年代のマイク・タイソンなのだが(90年2月に東京ドームでダグラスに負けた)、さて、その最盛期のタイソンでいまのワルーエフを倒せるだろうか?

2000年に195cmのルー・サバリースの頭頂部にタイソンのフックがかすっただけで倒れたことがあり、位置的にはワルーエフだとちょうどアゴの先端になるだろうから、タイソンならやりそうな気がするが、そう思いたくなるほど、タイソンというのは本当に不世出のボクサーだったということだろう。

p.s.この日のWOWOWの勝者当て懸賞で、正解者のうち10名の中に私の名前があった。WOWOWの画面に自分の名前が出るのは、うれしいけれどなんだか妙な気分である。

[Oct 11,2006]

パッキャオvsモラレス Ⅲ

スーパーフェザー級12回戦展望(2006/11/18、ラスベガス トーマス&マック・センター)
O マニー・パッキャオ(フィリピン、42勝33KO3敗2引分け) -275(1.35倍)
エリック・モラレス(メキシコ、48勝34KO4敗) +215(3.15倍)

今年のボクシング界で最後のビッグマッチ。一応、WBCインターナショナルのスーパーフェザー級タイトルが懸かっているが、両者にとってタイトルが懸かっているかどうかよりも、1勝1敗を受けた決着戦ということにこそ意味がある。

なにしる、モラレスはWBC・WBOスーパーバンタム、WBCフェザー、WBC・IBFスーパーフェザーの5メジャータイトル、パッキャオはWBCフライ、IBF・WBOスーパーバンタムの3メジャータイトルを制覇したビッグネームであり、タイトルなどなくても十分に集客できるボクサーだからである。

しかし、ここ最近の勢いは大分違う。モラレスがフェザー級超で試合をしている2003年10月以降の試合は4勝1KO3敗で、世界クラスの相手だったことをさし引いても平凡な成績と言わざるを得ない。一方のパッキャオはフェザー級超では3勝2KO1敗。KOできなかったオスカー・ラリオスからも2度のダウンを奪っているので、モラレスよりも実績の点では上だ。

展開としては、第二戦と同様にパッキャオが思い切った左ストレートでモラレスを追い回すことになるだろう。いまのモラレスでは、まともに打ち合っては馬力負けする可能性が大きく、もともとアウトボクシングもできるので足を使ってヒット・アンド・アウェイ策をとるのではないか。そうなった場合でも、試合が長引けばパッキャオが捕まえることになりそうで、モラレスとしては、序盤でうまくカウンターを決めてパッキャオの追い足を止めたいところだ。

オッズもこうした見方を裏付けていて、パッキャオがかなり優勢と出ている。私の予想もパッキャオの判定勝ちで、モラレスは引退に追い込まれることになりそうだ。さて、予想通りパッキャオが勝ったとして、次の試合が難しい。WBAのエドウィン・バレロは米国で試合ができない(脳出血の所見があるため)。WBCのバレラはパッキャオとはやらないだろう。すると、フェザーから上げてくるはずのファン・マヌエル・マルケスとの決着戦になるのだろうか。

前から書いているがもともとこの二人とも下のクラスの選手であり、数年前のスーパーフェザー級で同時期にチャンピオンだったメイウェザー(WBC)、カサマヨル(WBA)、コラレス(IBF)、フレイタス(WBO)達と戦ったらおそらく体力負けしたのではないかと思う。しかし、現時点ではそうしたハイクラスの選手はこの階級にはいないのが残念である。

スーパーフェザー級12回戦(11/18、ラスベガス)
マニー・パッキャオ O KO3R X エリック・モラレス

現在の調子がそのまま出た試合で、パッキャオがモラレスをKOした。1Rは様子見で2Rから早速打ち合いとなったが、モラレスのパンチがパッキャオを捕らえてもパッキャオは委細構わず前に出て、結局左ストレートから連打をまとめて2R1度、2Rに2度、計3度のダウンを奪ってモラレスがギブアップした。

勝敗は全く予想通りだったが、3Rというのは全く予想外で、モラレスがパッキャオの望む短期決戦に応じたのは打ち合いに自信があったからではなく、逆に体調に不安があり長期戦になった場合スタミナ切れの不安があったからだと思う。

というのは、まだ序盤の1R2Rなのに、パッキャオのボディ打ちに過敏に反応し、ガードが下がったところを右のショートフック、左ストレートを被弾していたからだ。全盛期のモラレスならば少々ボディを打たれたとしても、その間に空いている敵の顔面にハードパンチを入れていたはずで、それができなかったというのはすでに往年のモラレスではなかったということであろう。

どうもモラレスの普段のウェイトはスーパーフェザー級リミット(130ポンド)より20ポンド近く重いらしく、パッキャオもそれに合わせて計量後140ポンドに上げて試合に臨んだらしい。

いまや「OK牧場」のお笑いタレントとなってしまったガッツ石松が、現役当時約30ポンド(15kg)減量してふらふらになって試合をしていたことがあったが、そんな状態ではボディが効くのは当たり前である。プロモーターのボブ・アラムもモラレスに引退勧告したようだし、約10年にわたったモラレスのトップボクサーとしてのキャリアもこれで終止符を打つことになる。

一方のパッキャオ、「次はマルコ・アントニオ・バレラ」と言っていたが、バレラはおそらくやらないだろう。ラスベガスでメインを張れる唯一の東洋人ボクサーであり来年もビッグファイトを期待したいのだが、このクラスに面白い相手はあとバレラとファン・マヌエル・マルケスくらいしかいない。クラスを上げるとも言っていたが、カサマヨルはともかくファン・ディアスとやったら体の違いで圧倒されるので、やめた方がいいと思う。

[Nov 20, 2006]

デラホーヤvsメイウェザー

WBC世界スーパーウェルター級タイトルマッチ展望(2007/5/6、ラスベガスMGMグランド)
O オスカー・デラホーヤ(米、38勝30KO4敗) +140(2.4倍)
フロイド・メイウェザー・Jr(米、37戦全勝24KO) -170(1.6倍)

4階級目を勝って5階級目に挑む天才メイウェザーだが、相手がデラホーヤという前に、このデータをみていただきたい。メイウェザーがデビュー以来、どの階級にどれくらいいたかというデータである。

[スーパーフェザー(130lbs=59.1kg)]5年1ヵ月、27戦
[ライト(135lbs=61.4kg)]2年、4戦
[スーパーライト(140lbs=63.6kg)]1年8ヵ月、3戦
[ウェルター(147lbs=66.8kg)]1年6ヵ月、3戦
[スーパーウェルター(154lbs=70.0kg)]準備期間5ヵ月、転級初戦

一目で分かるのが、メイウェザーがキャリアの半分以上をスーパーフェザーで過ごしているということである。そして、ライト級に転向した後のホセ・ルイス・カスティージョとの2連戦が最も苦戦した試合。その後スーパーライトのガッティとの試合は完勝だったが、ウェルター級ではザブ・ジュダーにやや苦戦、格下のバルドミール戦では全くKOのチャンスすらない判定勝ちだった。

そして今回の試合はスーパーウェルター。スーパーフェザーと比較すると24ポンド、11kg違うクラスである。このクラスの選手を倒すだけのパワーは、メイウェザーにはない。それは相手がデラホーヤでなくても、ダニエル・サントスでも、シェーン・モズリーでも、アントニオ・マルガリト(ウェルターだが)でも倒せない。もともとスーパーフェザーの時ですらタイミングで倒すタイプだったのだから、ここまでクラスが上がってパワーで対抗できるはずがないのである。

だから、この試合はメイウェザーにとってかなり無理があるクラスでの戦いということになる。そうなると思い出すのはデラホーヤがミドル級でバーナード・ホプキンスと戦った試合。この試合でもパンチを出した数ではデラホーヤが上回っていたが、ホプキンスを倒せそうなパンチは一つもなかった。最後はご存知のとおりホプキンスのボディ一撃でKOである。

さらに、メイウェザーのディフェンスもクラスを上げるにしたがって変質している。スーパーフェザーでディエゴ・コラレスをコントロールした試合では、足を使ってコラレスのパンチを当てさせなかった。それが少しずつ足を使わないようになり、最近ではロープに詰まって上体の動きだけでかわす場面が目立つようになった。ナチュラルウェイトが10kgも違う相手のパンチをたとえガードの上からとはいえ受けていては、ダメージゼロという訳にはいかないのではなかろうか。

一方、6階級を制覇したデラホーヤの同様のデータは以下のようになる。

[ライト(135lbs=61.4kg)]11ヵ月、11戦
[スーパーフェザー(130lbs=59.1kg)]7ヵ月、2戦
[ライト(135lbs=61.4kg)]1年7ヵ月、7戦
[スーパーライト(140lbs=63.6kg)]1年1ヵ月、3戦
[ウェルター(147lbs=66.8kg)]4年2ヵ月、12戦
[スーパーウェルター(154lbs=70.0kg)]2年6ヵ月、4戦
[ミドル(160lbs=72.7kg)]1年、2戦
[スーパーウェルター(154lbs=70.0kg)]2年7ヵ月、1戦

同じスーパーフェザーからのクラス上げとはいっても、デラホーヤの場合ライト級から落として2戦しただけであり、そしてキャリアの最も長いのはウェルター級である。これは今回行われるスーパーウェルターと1階級しか違わない上、デラホーヤの場合さらに1階級上のミドル級でも試合をしている。

ウェルター以上の実績でも、JCチャベス第2戦、アイク・クォーティー戦、トリニダード戦、モズリー2連戦、カスティリェホ戦、バルガス戦、ホプキンス戦、そして先日のマヨルガ戦と多くの激戦を戦っており(4敗しているが)、すくなくともこのクラスでえりぬきのハードパンチャー達と五分以上の戦いをしてきたことは間違いない。

問題はデラホーヤのスタイルが、パワー系の選手に対してスピードで対抗するのはかなり得意としているのに対し、スピードのある相手を迎え撃つのはそれほど得意ではないというところにある。ただし、今一歩踏み込みの足りなかったトリニダード戦やモズリー戦と違い、メイウェザーのパンチはまともにカウンターで食わなければ大丈夫とデラホーヤは思っているはずで、だとすれば相打ちさえしていればいいということになる。

展開としては、メイウェザーは体のサイズが違うので動かざるを得ないし、デラホーヤはガードを固めて前に出ることになるだろう。その場合、10kgの鎧をつけてメイウェザーがちゃんとフットワークを使えるかどうか。デラホーヤのパンチをすべてかわすことは難しいので、どこまでダメージが少ない間にデラホーヤを痛めつけることができるかが鍵になる。

結論としてはデラホーヤ。なぜかというと、このクラスのちゃんとした選手とやって、少なくとも現時点のメイウェザーでは倒せないと思うからである。だから問題は、デラホーヤがマヨルガ戦の出来を維持できているかどうかで、それができているようならバルガス戦のように後半メイウェザーをつかまえるだろう。メイウェザーが勝つとすればコラレス戦のような展開だが、こんなに頻繁にクラス上げをしてなお勝ち続けることができるほど、ボクシングは甘くないと思うので。

オッズはメイウェザーFavoriteだが、最初-160位(JRA式にいうと1.6倍)でスタートしたオッズが一時-240(1.4倍)まで上がり、ここからデラホーヤが盛り返して現在のオッズとなっている。

WBC世界スーパーウェルター級タイトルマッチ(5/6 ラスベガス)
フロイド・メイウェザー O 判定(2-1) X オスカー・デラホーヤ

一言で言って、世紀のスーパービッグマッチというにはやや水準の低い試合。なぜそうかというと、メイウェザーは体に重りをつけてファイトしているような鈍い動きだったし、デラホーヤも12ラウンド動き続けるだけのコンディションを作ってこなかった。先週お届けした予想のまさにそのとおりに進んだ試合だったのだが、デラホーヤが9R以降失速してしまって判定を落とした。私の採点では114-114のドローであるが、柔道のように優勢をつければメイウェザーだから判定に異存はない。

試合直後のデラホーヤのインタビューで、「勝ったと思った」と言っていたが、これはトリニダード戦のときやモズリー戦のときと同じ言い分で、たしかにそう採点するジャッジもいた訳だからそう思っても仕方ないのだが、だからといって勝手にペースダウンしていいことにはならない。これでは、プロモーター業に熱心で走りこみが足りなかったと思われても仕方がない。すでにビッグマネーを十分すぎるほど手にしており、無理もないとはいえ。

少なくともデラホーヤに、マヨルガ戦やフェルナンド・バルガス戦のような覇気というか気力充実というところはあまりみられなかった。序盤2、3ラウンドまでは執拗にボディを狙ってアグレッシブに攻めていたのだが、すぐにいつものような攻め方に戻ってしまいメイウェザーの逆襲を許した。相打ちをすべきところで顔のガードを優先したような気もする。こうなってみると、デラホーヤはラストファイトで、「圧倒的に完敗するおそれのない相手」をうまく選んだといえなくもない。

試合自体はデラホーヤの作戦勝ち、というよりもメイウェザーは少なくとも現段階でこのクラスの一流を相手にするのはやはり無理である。終盤デラホーヤがふらついたのはメイウェザーのパンチに押されてというより自分のガソリン切れで、メイウェザーのパンチはポイントは取れるけれど相手を倒すことはできそうもない。これで、ガッティ、ジュダー、デラホーヤから3階級取ったことになるが、この3者のいずれもが下のクラスから上がってきていることは大きな要因だろう。

スーパーファイトというからには、どちらがどちらを倒してもおかしくないということでなくてはならない。3年半前のホプキンスvsデラホーヤでは、実際にホプキンスが必殺のボディブローを決めたし、いまなぜパッキャオが人気沸騰しているかというとKOするからである。今回の結果はメイウェザーがデラホーヤに勝ったというだけで、スーパーウェルター級で世界最強を示した訳ではないし、ましてやパウンド・フォー・パウンド(各階級最強)を印象付けたものでもない。

有名選手同士を戦わせても決していい試合になる訳ではないということを改めて感じさせられた。

[May 8, 2007]

内藤やった!3度目の正直で世界チャンプ

WBC世界フライ級タイトルマッチ(2007/7/18、後楽園ホール)
内藤 大助 O 判定(3-0) X ポンサクレック・ウォンジョンカム

全国ネットの中継がつかず、東京メトロポリタンTVの中継。ちらっと徳山が勝った時のことを思い出して何か今日はやるのではないかという気がしていた。内藤自身が2度負け(内藤の2敗はいずれもポンサクレックで、他の選手には負けていない)ているにもかかわらず、序盤からほとんど腰が引けずによく戦った。これでWBA、WBCとも日本人チャンピオンである。

内藤のガードが低くて打つ姿勢も良くないのはいつものことだが、今夜の試合なぜかポンサクレックが前に出てきたので、かみ合ってカウンターが再三決まった。なぜカウンターパンチャーのポンサクが最初から出てきたのだろうか。報道されたように減量の失敗があったのかもしれない。

3Rにポンサクが目を切ったのはパンチという判定で、確かにこの回内藤の右がクリーンヒットしたが、傷を見た感じではバッティングの可能性も高い。いずれにせよこの負傷でさらにポンサクがあせって空振りが目立つようになる。そしてオープンスコアリングシステムで途中採点が内藤有利ということになれば、ポンサクも出るしかなくなってしまった。

圧巻は9ラウンド。おそらく8ラウンドまでのポイント発表を聞いたのであろうポンサクが勝負をかけてきた。この回前半は打ちまくられた内藤が危ない場面もあったのだが、開き直って打ち合いに応じたら逆にポンサクの方が効いてしまった。10Rポンサクが休まざるを得なかった時点で、内藤の番狂わせがほぼ決定的となった。

試合を通じて見栄えが良くなかったのは、オーソドックス(内藤)対サウスポー(ポンサク)で足の踏み合いになったことと、内藤がなりふり構わず勝ちに行ったからで、本来内藤はちゃんとしたボクシングもできる選手である。逆にきれいなボクシングをしていたら、百戦錬磨のポンサクに細かいパンチを当てられていただろうから今夜はあれが正解だろう。

さて、これでフライ級のビッグマッチが日本で行えることになった。この試合では内藤に実入りほとんどなかったようなので、次はファイトマネー1億円の試合を用意してあげてほしい。私が期待したいのは、内藤対亀田興毅、坂田対亀田大毅のダブルタイトルマッチ。内藤・坂田とも弟とやりたいだろうな。楽勝だから。

[Jul 19, 2007]

パッキャオvsバレラ

WBCインターナショナル・スーパーフェザー級タイトルマッチ展望(2007/10/6、ラスベガスMGMグランド)
O マニー・パッキャオ(フィリピン、44勝35KO3敗2引分け) -285(1.3倍)
  マルコ・アントニオ・バレラ(メキシコ、63勝42KO5敗1NC) +225(3.25倍)

この間までWBCの同級世界王者だったバレラが、格下のインターナショナル王座に挑戦する試合。本場アメリカでは、もはや世界戦統括団体にはほとんど意味がなく、ファンが見たい試合がビッグマッチとなるという見本のような試合である。

しかしバレラも、もう33歳。デビュー以来19年が経過し、かつて「童顔の暗殺者(ベイビー・フェイス・アサシン)」と呼ばれた面影はすでになく、単に恐い顔のおっさんである。わたし的には、2000-2001年、モラレス第一戦やナジーム・ハメド戦がバレラのピークであり、それ以来実力的には長期低落傾向にあるとみている。

かたやパッキャオ、いま28歳とキャリア最盛期といっていい年齢になった。フライ級で世界チャンピオンになった選手はスーパーフェザーまでは無理と長いこと言い続けてきたが、ここ3年間はこのクラスで強敵ばかりを相手にしてほとんどの試合をKO決着で片付けており、体格的な問題を云々するのは難しくなってきた。

こうした背景からみると、およそ2.5対1という賭け率は、むしろバレラの過大評価ともいえる。この評価の要素として、今年3月のファン・マヌエル・マルケス戦でのほとんど互角の戦いがあったのだが、あれは8R終了間際のカウンターが決まったのがラッキーだったので、あれがなければほとんど一方的な試合だった。

もちろん、「バレラはまだこんなにできたんだ」とは思ったけれども、いまや当たるところ敵なしの勢いのあるパッキャオでは、前回(11RKO負け)と同じ結果になる可能性が大きい。パッキャオが飛び込んでくるスピードに合わせてカウンターを打つのは6年前のバレラでも難しかったのだから、今ならもっと難しいとみている。パッキャオのKOにブラックチップ。

  WBCインターナショナル・スーパーフェザー級タイトルマッチ(10/6、ラスベガス)
マニー・パッキャオ O 判定(3-0) X マルコ・アントニオ・バレラ

パッキャオKO勝ちを予想したが、始まってみるとバレラがパッキャオの左を交わし続け、ペースは完全にバレラだった。11Rにレフェリーがブレイクをかけた後の打撃があってバレラ減点、それを含めて私の採点は116-111でパッキャオ。

パッキャオの左が当たらなかったのが、バレラのテクニックによるものか、パッキャオの衰えによるものか、あるいはその両方なのかは不明だが、少なくともパッキャオにバレラ第一戦やモラレス戦のような必殺の気合が感じられなかったことは確か。あるいは十分すぎるビッグマネーを稼いで、地元での祝賀会の方に関心が移ってしまったのかもしれない。

パッキャオの長所は思い切りの良さと、少々打たれてもひるまないハートの強さであるのだが、今回はその長所が目立たず、逆に短所であるパンチに種類がないことが際立っていた。局面を打開するには、打たれるのを承知で突っ込むか、さもなければ細かいパンチで相手のディフェンスを崩す必要があるが、今回のパッキャオはそれができなかった。

もしこれが年齢(28歳だが、もう50戦している)や上昇志向が失われたことによるものだとすると、今後、マルケス兄やエドウィン・バレロ、ホルヘ・リナレスといった面々とやっても勝てないのではないかという気がする。

[Oct 8, 2007]



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