ギリヤーク尼ヶ崎、最後の大道芸人


ギリヤークのいない函館 [Aug 31, 2016] 

ギリヤーク尼ヶ崎師匠は昨年来体調を崩していて、毎年恒例であったGWの関西公演、初夏の横浜六角橋公演は中止になってしまった。夏の北海道公演も中止ということであったが、7月末になってファンブログに、8月21日に函館でやるらしいとの情報が掲載された。

もしやと思って函館市文化・スポーツ振興財団のホームページをみると、なんと今年のざいだんフェスティバルにも、ギリヤーク師匠が出演予定と書いてあって、ポスターにも写真が掲載されている。何と言っても函館は師匠の故郷であり、応援している方達も大勢いらっしゃるのである。

これは是非とも行かなければならない、と急いでエアとホテルを確保した。こういう時に身軽なのは、リタイアしてたいへんありがたいことの一つである。できれば行きか帰りに青森に寄ってまぐろと地酒を堪能したかったのだけれど、ねぶたでもないのにホテルが満杯なのであきらめた。

ところが、いよいよあと1週間という8月12日になって、再びファンブログに「8月21日の函館公演は中止にするとのことです」の記事が。全く予想していなかったというと嘘になるが、大変がっかりしてしまった。続いてざいだんフェスティバルのHPにも告知があったものの、すでに手配済みでもあるので函館には予定どおり行くことにした。

函館は40を過ぎてから仕事でたびたび行くようになり、数えたことはないが15回30泊以上は間違いなく行っているだろう。それとは別に、30代までの間にプライベートで函館に行った回数も同じくらいあるはずである。なにしろ、昔は青函連絡船だし結婚してからは車だったので、函館を経由しないとそこから奥へは進めないのである。

学生の頃は貧乏旅行だったから、周遊券が使える急行自由席でしか行けなかった。初日は上野から常磐線経由で盛岡まで。わんこそばを食べて碇ヶ関行きの急行で青森に着く頃には外は真っ暗で、青函連絡船の夜行便で宿泊費を浮かせたものであった。

函館市内は当時から高かったので、電柱に貼ってある1泊千円の2段ベット宿泊所に泊まるのがせいぜいであった。今となっては、その宿がどこにあったか全く覚えていない。昨今は海外貧乏旅行客をあてこんでドミトリー方式も増えているようで、先祖帰りみたいでおもしろい。

社会人になってホテルに泊まれるようになり、たいへんうれしかった。当時は、松風町の市電通り沿いにあったホテルリッチによく泊った。確かミシン会社のリッカーがやっていたホテルで、勤めていた会社の契約保養所だったのである。その後経営難で廃業してしばらく空きビルになっていたが、いまは別のホテルになっている。ホテルの周りはいまでは空き地だらけである。

金曜日の昼便で函館入り。台風接近という情報はあったものの、幸いに函館は雨がぱらつく程度で風もほとんどない。土曜日は市内を歩いたり温泉に入ったりして過ごし、いよいよ日曜日。昼過ぎにざいだんフェスティバルの開かれる千代台公園陸上競技場に入った。

いきなり入口のコンクリ柱に、「お詫び 出演者体調不良により中止となりました」の掲示が。残念である。それでも予定時間まで待ったのは、かつて、わざわざ公演当日に旭川まで行ったのに、幟とかがなかったのでやらないと早合点して飲みに行ってしまい、実はその後公演が行われたという苦い経験があったからである(こちら)。

お昼を食べていなかったので、出店で調理パンを買ってグラウンドに出る。雨はいったん上がっていて、係の人がプラスチックの椅子を拭いて回っているので、ありがたく座らせていただいた。芝生は、昨年同様におそろしくいいコンディションだ。これなら函館競馬場にも負けないくらいだろう。

場内放送では、しばらく前から抽選会の中継が続いている。12時半になったら、あるいはギリヤーク師の公演中止の放送があるかと思ったのだが、依然として抽選会が続いている。

公演中止のお知らせの横に、「ギリヤーク尼ヶ崎 青空写真展」の文字があったのでそれらしいブースを探すけれども、雨が降ったり止んだりあいにくの天気なので、展示があるとすればここだろうと思われる昨年の公演会場のあたりは芝生がきれいに生えているだけであった。




事前告知のポスターには載っていたのに。会場の入口には、公演中止のお知らせが・・・。





公演予定時間の12時半には、雨も上がって芝生もグッドコンディション。昨年、公演が行われたあたりはちょっと寂しげでした。

グラウンドからスタンド下に戻る。抽選会の人込みをかき分けて出口に向かうと、なんと脇のスペースにキノさんがいらっしゃって、ギリヤーク師の写真がスタンド形式で6脚ほど飾られている。「青空写真展」というくらいだからきっとキノさんがいるだろうと思っていたら、そのとおりであった。

何度かお会いしているので、「今日は残念でしたね」と話しかける。すると、そこにキノさんの大道芸の商売道具である手回しオルガンが置いてある。「これが手回しオルガンですか」と尋ねると、「抽選会が終わったら演奏しますので、よかったら聞いて行ってください」とのこと。おお、時間まで待っていただけのことはあったようである。再びグラウンドに戻って待機する。

場内放送でずっと流れている抽選会の中継を聞いていると、景品はクオカードとかお食事券とか500円1000円見当のもので、おそらく協賛会社からの寄付なのだろう。当たった人がその場にいないと権利がなくなるようで、5人に1人くらいは「xxx番の方、いらっしゃいませんか。カウントダウン5、4、3、2、1、申し訳ありませんが次の方に」となる。あいにくの空模様なので、帰ってしまったのであろう。

抽選会が終わると、「手回しオルガンの演奏があります」と場内放送があり、スタンド下に向かう。すでに何人かの子供達がオルガンの前で待機している。ちょうど通路にあたってしまって狭いので、函館バスのミニカーを売っているブースの横で拝見させていただいた。

まずはじめに、手回しオルガンで曲を流しながら、紙芝居。さすがにご自身も大道芸人だけあって(キノさんは函館市の観光大使である)トークは手慣れたものである。曲と曲の合間に、手回しオルガンの説明や、ギリヤーク師匠のことなどの説明がある。

手回しオルガンはハンドルを回すと紙芝居キットの中にあるふいごが上下して空気を上の層に送り、そこで各音階の笛を鳴らすという仕組みになっている。ハンドルと一緒に回る連続紙に穴が開いていて、それがどの笛を鳴らすかという合図になっているようだ。まるで50年前のコンピュータのようである。

ギリヤーク師匠は体調がすぐれずご自宅で静養中とのことだが、つい最近、北海道新聞社(道新)から写真集が出たそうだ。何十年前に青空舞踊公演を始めた頃の写真も掲載されており、ファン必見である(帰ってからさっそく注文させていただきました)。これは3,000円じゃ作れないだろうと思うくらい、手間のかかった立派な本です。

曲の終わりにしゃぼん玉が飛び出すという子供たち大喜びの趣向や、青空写真展(屋内になってしまいましたが)の写真説明を交じえ、最後の一曲は「銀河鉄道の夜」に乗せて、なんと、今回が2度目の公開というギリヤーク紙芝居。ギリヤーク尼ヶ崎師匠の公演を見に来た人にとって、たいへんうれしいサービストラックでありました。

キノさん、ピンチヒッターお疲れ様でした。たいへん楽しませていただきました。公演中止と聞いて遠征を中止しなくてよかったです。そして、函館はそれほど天気が荒れなくてよかったですが、翌日は無事に帰ることができたでしょうか(私はJAL便が欠航で、新幹線の立ち席で帰ることになりました)。

気が付いてみるともう8月も下旬に入り、体育の日まであと40日足らず。果たしてギリヤーク師匠は今年も三井55ひろばに現れることができるのか、期待と不安が半々する中、ざいだんフェスティバル会場を後にしたのでした。

[Aug 31, 2015]




ギリヤーク尼ヶ崎師匠のピンチヒッターとして、キノさんが手回しオルガンで登場。




公開するのは2度目という、ギリヤーク紙芝居。これを見ただけで、函館まで来た甲斐がありました。



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