尾瀬戸倉温泉
日光湯元温泉 [Jun 30, 2021]
先月、男体山に登るため日光湯元温泉に宿泊した。
日光湯元に泊まるのは約40年振りで、3度目である。最初は小学校の修学旅行で52年前になる。12年くらい後に、最初に就職した会社の課内旅行で泊まった。いずれの回も、温泉でゆっくりするというより仲間で騒ぎに行ったようなもので、どういう景色でどういう旅館だったかほとんど覚えていない。
だから、今回戦場ヶ原を越えて湯ノ湖が近づいたとき、あまりの雄大さに驚いてしまった。湖畔に並ぶ温泉街からは、後方左から日光白根山、温泉ヶ岳(ゆせんがたけ)、さらに右に山王帽子山から太郎山へ連なる峰々が続くという、まさに圧巻の風景なのである。
これほどすばらしい景色を、ずいぶん昔とはいえ2度も来ておきながら全く記憶にも残っていないとは不覚である。とはいえ、この歳になっても新しい収穫は喜ぶべきことだ。
温泉街に入るとすぐ硫黄臭が漂っているように、基本的には硫酸塩泉である。温泉街の東寄り、湖から少し入ったところに共同源泉があり、各旅館に供給されている。大規模なホテルでは別に自前の源泉を持っていて、微妙に成分が違うようである。
私の泊まったおおるり山荘にも何本かの源泉があり、成分表は共同源泉と3本の自家源泉をまとめて掲示されている。多い成分は硫化水素・炭酸水素-ナトリウム・カルシウムで、硫酸塩泉と炭酸水素泉の性格を併せ持っている。
硫黄らしく白濁したお湯だが、それほど濃くはない。そして、湧出温度がそれほど高くない(約43℃)ため、熱く感じることはない。夜中にボイラーの響く音がしたので、加温しているのかもしれない。
こちらの温泉は夜中でも温泉に入ることができる。ありがたいことである。自然温泉であれば当り前のようだが、防犯上の問題はともかく供給量の問題から、入浴時間が制限されているところが少なくない。
朝、露天風呂に入りに行ったところ、まさに正面に温泉ヶ岳を望むすごい景色で、しばし時を忘れて見とれてしまった。
もっとも、以前訪れた旅館はもう少し奥にあるため、露天風呂からこのような雄大な景色を望むのは難しいようである。小学校の時に泊まった板屋旅館はコロナの影響か、「本日お休みさせていただきます」の札が下がっていたし、社会人になって泊まったであろう一角もあまりひと気がなかった。
代わりに、奈良市内でもないのにシカが道の真ん中を堂々と歩いていたし、温泉寺の前では疾走するタヌキを、湖畔では顔を洗いに来ているサルの群れを見かけた。
湯ノ湖に沿って、収容人員200~300ありそうな大規模ホテルが7つ8つ並んでいるのだが、それほど集客できるように見えない。昔なら社内旅行や修学旅行で大口需要があったのだろうが、現状それも難しい。
頼みの綱は海外客で、泊まったホテルにも中国語・韓国語で案内が書かれていたのだけれど、コロナでもちろん来ておらず日本人シニア客ばかりだった。
ただ、一時期北海道が中国人客ばかりになって雰囲気がよくなかったので、年寄りが遠慮しながらしゃべったり館内をマスクして歩いたりするのを見るのはほっとする。こういう雰囲気で、ずっとやっていけたらいいのにと思う。
ところが実際には、ここと立地がよく似た温泉街である阿寒湖温泉には閑古鳥が鳴いており、しばらく前だがそこら中が休館・閉館となっている状態であった。それも、何階建ての大きなホテルに建て替えて何年もしないうちにである。
はじめから、大規模な投資などしないで小規模に続けていればよかったと思うが、そうはできない人間の悲しさということになるのだろうか。
[Jun 30, 2021]
※ 奥日光湯元をはじめとするおおるり旅館グループは、2021年8月末で塩原おおるり、草津ニュー紅葉の2館を除きすべて閉館することとなりました。本当に残念です。また泊まろうと思ったのに。割引券もあるのに。
お世話になったおおるり山荘。日光湯元温泉に来るのは3度目ですが、ゆっくり風景を楽しめたのは初めてです。
翌朝、温泉街を歩くとシカもお散歩中でした。サルとタヌキにも出会いました。
ショック!!! ホテルおおるり閉館 [Sep 1, 2021]
2、3日前のことである。秋の山行の下調べをするのにGoogle Mapをみていたら、その近くにあるホテルおおるりのところに「2021/8/31閉館」と書いてある。ホテルおおるりはついこの間日光湯元に行ったばかりである。
ところが、ホテルおおるりのホームページを見ると、閉館となるのは1つ2つではなく、グループ12館のうち10館が8月末で閉館となるという。私が6月に泊まった奥日光湯元も閉館である。
下野新聞のWEBによると、閉館となったホテルは売却の方向とのことであるが、コロナで自粛が推奨され海外客が戻る目途もまったく立たない中、買い手が簡単に見つかるとは思えない。あるいは、鬼怒川の廃墟ホテル群のようになるのかもしれない。
先々月に泊まった印象では、温泉は湯量豊富だし部屋はきちんと清掃されているし、半分セルフとはいえハーフバイキングの食事も悪くなかった。受付や売店に常時人がいないのは不便だが、朝5時に覗いたら当番の人が出てきた。少ない人数で、ちゃんと運営されていたのである。
6月に泊まった時10月までの割引券を配っていたので、秋にまた来ようと思っていたのである。にもかかわらず、閉館である。使う方は他を当たればいいけれども、従業員や納入業者は目の前が真っ暗だろう。
もちろんコロナは不可抗力であるが、事件発生から1年半経っているのに感染者数が急拡大して総力戦などと言っているのは政治の責任である。しかし、100以上の客室、数百の収容人員のハコを作っておいて、50人の来場客では採算が取れませんなどというのは経営者の見通しが甘すぎたということである。
すでにわが国では10年前から人口が純減に転じており、今世紀後半には六千万人程度とかつての半分になることが見込まれている。家も、学校・保育園も、レジャー施設も外食施設も商業施設も半分しか要らなくなる。「スクラップ・アンド・ビルト」とよく言われるが、スクラップが増えるだけでビルトの必要がなくなるのである。
資本主義の世の中だから、儲かると思って投資することを誰にも止められないし、担保をとるから取りっぱぐれることはないと思って貸すことも止められない。でも、誰もが儲かる訳ではないし、貸し倒れれば担保を処分しても足りない。
本来ならば、急いで返さなくてもいいおカネで施設を作り、料金は人件費と食材費、施設改修のための積立金くらいに充当しておけば、利用者が減ったとしても何とか急場はしのげる。でも、そんなことができるのは公共施設だけで、民間施設の多くはフル稼働して何とか借金返済できるような資金計画を立てている。
そうやって余計なことをして廃墟を作るのだけれど、カネのある人がそのカネを捨てるのも資本主義では本人の自由である。人の土地が廃墟になるのを見て不愉快に思う方が勝手という理屈だろう。景色や自然は「公共財」で、誰か一人の所有物ではないはずなのだが。
とりあえず、秋の山でどこに泊まろうか、一から計画を見直さなければならない。
[Sep 1, 2021]
6月に泊まった際、10月までの割引券を配っていたホテルおおるり。まことに残念なことに、8月末で10館中8館が閉鎖となりました。まだ2館やっているので、使えない訳ではないのですが。
奥鬼怒温泉郷・日光澤温泉 [Dec 27, 2021]
先般、長いこと懸案となっていた奥鬼怒温泉郷に行くことができた。
私が若い頃買ったガイドブックには、このあたりの温泉にはまだ電気が通っておらず、ランプの宿だと書いてあった。日光澤温泉は外観こそ当時をほうふつとさせるものの、中は意外と新しい。
女夫渕(めおとぶち)駐車場から、鬼怒川源流に沿って遊歩道を延々と歩く。ガイドブックを見ると、遊歩道に沿って温泉宿が点在しているようなイメージなのだけれど、実際歩いてみるとかなり違う。
というのは、女夫渕から八丁の湯までがかなり長くてここまで1時間半かかるのに対し、八丁の湯、加仁湯、日光澤温泉は歩いてすぐで、スーパー林道も加仁湯の上まで通り、そこから八丁の湯、日光澤に枝分かれしているのである。
だから、林道が通ってすぐに八丁の湯、加仁湯が大規模なホテル風に改築したのに対し、日光澤温泉だけが昔の山小屋風であるのはちょっと不思議である。いちばん奥だからできなかった訳ではなさそうである。
さて、この日光澤温泉、外観だけみると奥多摩の雁峠山荘みたいだけれど、、窓は二重で床にはじゅうたんが敷かれ、中にいる分には寒くない。部屋にはファンヒーターとこたつが用意されている。
内部は何度か増改築されていて、ところどころ段差があり構造も分かりにくい。朝になって、窓から外を見ると前日通った温泉神社が上に見えたので、ようやく位置関係を把握できたくらいである。
温泉は内湯と露天風呂があり、男風呂の内湯とすぐ外の露天は硫酸塩泉である。山ひとつ向こうが日光湯元温泉なので、泉質もよく似ている。硫黄臭があるのも同じで、何度か入っていると体が温泉の匂いになる。
お湯は相当熱い。水を入れて冷ますように書いてあるのだが、蛇口を一杯にひねっても水はほとんど出てこない。だから、熱いのを辛抱して入る。露天風呂は幾分冷めているみたいだが、翌朝は大雨だったのでぬるくなってしまっていた。
泉質表によると、別にある露天風呂は食塩泉のようなのだが、朝入ろうと思ったら土砂降りになっていたので断念した。やはり日光湯元でも食塩泉が出る源泉があったと思う。
この日は女夫渕から鬼怒沼まで登って、しかも2000m付近は雪と氷だったのでかなり疲れた。しばらく湯舟に浸かったら相当効いてしまって、階段を昇るのに四苦八苦した。浴室は構造的には地下2階にあたり、2階にある客室まで3階分登らなければならない。
食事は1階の広間でまとまって食べる。あゆの干物、野菜天ぷら、肉とピーマン炒めなど。アルコール類もひととおり置いてあり、私は地酒・日光誉の純米吟醸をお願いした。きんきんに冷やしたもので、口当たりがすごくいい。
auの携帯は圏外だったが、どこかの携帯を使っている人がいたので、まったく入らないということでもないようだ。ただし、TVとかは置いていないしWifiもない。何となく、高野山の宿坊を思い出してしまった。
[Dec 27, 2021]
日光澤温泉玄関と一体化する番犬サンボ。建物内部は外から想像するほど古くはありません。
浴室は構造的には地下2階になるため、2階の客室からの往復はちょっときつい。特に鬼怒沼まで行ってきた後は。この写真は下から。
日光澤温泉の夕食。あゆの干物、野菜天、肉とピーマン炒めなど。地酒・日光誉の純米吟醸はなかなかいけます。
再び日光湯元温泉
今年は暑くて9月になっても山に行けないので、先週、10月2~3日で奥さんと日光に行ってきた。
現役でカネ回りがよかった頃は温泉だの北海道だのいろいろ出かけたものだが、年金生活者になってそうもいかない。寂しいものだと思う間もなくコロナ騒ぎで、仮にカネがあったとしても出歩けなくなった。
まだ場所によってはマスク推奨だし、コロナとインフルエンザのダブル流行とか言われているけれども、行ける時に行かないといよいよ動けなくなる。もう60代後半、あと10年かそのくらいしかないかもしれない。
いろは坂を登り、半月山展望台で年賀状用の写真撮影。半月山は前来た時には誰もいなかったのに、今回は何台もの車とすれ違ったし、展望台にもたくさん人がいた。外人さんの姿もあったのは、さすが日光である。
そういえばこの間、TVの旅番組でジャニーズが半月山の麓にある旅館に泊まっていた。他にも、1泊10万円くらいする高級ホテルもあるが、中禅寺湖をはさんで男体山という景色は同じだし、標高が高いだけ山頂展望台の方が見晴らしがいい。
ジャニーズといえば、コンプライアンスだの社名変更だの言っているその裏で、記者会見の指名拒否リストを作って特定記者からの質問を受け付けなかったらしい。そういう資料を見えるようにTVカメラの前に出すのだから大バカである。
戦場ヶ原を抜け、日光湯元の駐車場も車がたくさん止まっていた。こちらのキャンプ場はクマが出没するので、今シーズンは閉鎖されている。しかし、WEBによると駐車場でバーベキューしたり車中泊する連中がかなりいるらしい。
日光湯元にはコンビニがないし、飲食店もほとんどない。ホテルおおるりがなくなってバカ高い宿ばっかりなので、費用を節約しようとすると車中泊ということになる。おそらく、おおっぴらには認めていないはずだが。
おおるりといえば、かつてホテルおおるりだった建物はリニューアルして別のホテルになっていた。「亀の井ホテル奥日光湯元」と書いてあったが、HPを見ると1人1泊でおおるりより1万円高くなっている。
さて、この日泊まったのは日光アストリアホテル。光徳牧場横に昔からある一軒宿で、梵字飯場跡の近くにあるので前から気になっていた。
夕飯まで時間があったので、着替えてホテルの周りをジョギングする。前日までの千葉ニューは、いつまで夏なんだと思われるほど暑かったが、さすがに奥日光まで登ると涼しい。走ってもほとんど汗をかかないのは、春以来である。
せっかく用意した熊鈴を部屋に忘れてきてしまったので、ホテルから国道まで舗装道路を往復する。大事をとったつもりだったが、それでも周囲はひと気のない森で、熊が現われても全然おかしくない。
温泉は湯元から引いている。アストリアホテルまで5、6kmはありそうだが、さらに遠い中禅寺湖畔の各ホテルにも供給しているので大丈夫なのだろう。そして、洗面所から出る飲料水は湧水みたいなことを書いてあった。
張られているお湯はエメラルドグリーンで、乳白色だったおおるりとは違う。とはいえ、泉質は同じ硫酸塩泉である。家に帰るまでずっと硫黄臭が抜けないくらい濃い温泉で、源泉かけ流しだった。匂いはきつかったが、何ともいいようのないいいお風呂だった。
奥さんと温泉に来たのはコロナの前以来なので、たいへん気に入っていた。特に露天風呂は、涼しいのでいつまでも入っていられるくらいよかったそうだ。(日光だからと思っていたら、首都圏もこの日から涼しくなったらしい)
食事はレストランで、石焼のステーキとイワナの塩焼き、お刺身など和食のコース。予約した時には空室が3~4室しかなかったのだが、十数組しかお客さんがいない。しかも、ほとんどすべて老夫婦である。
奥さんにそう言ったら、「平日なんだから当り前でしょ。こっちだって老夫婦なんだから」と返されてしまった。
[Oct 9, 2023]
半月山展望台からの男体山と中禅寺湖。この日は天気がいいだけでなく、涼しくて秋らしい気候でした。前来た時は人がいなかったけれど、この日は結構いた。
宿泊した日光アストリアホテル。光徳にある一軒宿で、たいへん静かで落ち着いている。温泉は湯元から引いている。
尾瀬戸倉温泉
至仏山は登るのに4時間かかって帰りのバスに間に合うか心配したが、1時間半ほどで下山できたので予定時間にほとんど遅れることはなかった。 鳩待峠・尾瀬戸倉間は定時バスが運行されていると書いてあるが、実際には乗合タクシーである。だから、12時半を過ぎると1時半までない訳ではなく、1時過ぎには人数が集まって出発した。 3時間かけて登って来た道をどんどん下る。戸倉に着くと、バスの出発時刻までまだ1時間以上ある。バス停隣にある尾瀬ぷらり館で汗を流していこう。ここは尾瀬の地主である東京電力がやっているビジターセンターで、尾瀬の歴史や風物を展示するネイチャーセンターが併設されている。 同じことを考える人はいっぱいいて、館内は盛況だった。ただ、みなさんお風呂から上がった頃合いで、洗い場も浴槽も問題なく使えた。お風呂は戸倉温泉の硫黄泉が引いてあり、無色透明だが硫黄臭がある。温度はいくぶんぬるめ。 泉質としては、奥鬼怒温泉郷や日光湯元温泉と同じ硫黄泉だが、色も無色で匂いがそれほどでもないのは、こちらの特性なのかそれとも加水しているのだろうか。まあ、この後みんなバスか自家用車なので、匂うより匂わない方がいいかもしれない。 備え付けボディソープで洗い、浴槽に入ってゆっくりする。内風呂から脱衣所にある大きな時計が見えたので、時間を確認しながら入ることができた。湯上りには自販機でノンアルコールビールを飲みながらリュックの中を整理した。 尾瀬戸倉に来るのはこれで2度目だが、関越交通のターミナルが無人化するなど、かなり寂れてきた印象である。温泉宿はいくつかあるがいずれも小規模で、温泉街に付き物の飲食店も土産物屋もない。人通りがほとんどないのは、川治や塩原もそうである。 尾瀬に若い人達が大挙して押し寄せたのは60~70年前で、その時の連中は多くが現世から退去している。あまりにもゴミを捨てるので、持ち帰り運動が始まって今日まで続いている。戸倉にもゴミを捨てられないので、バスに持ち込んでSAに捨てることになる。 戸倉温泉も、当時は尾瀬歩きのベースキャンプとして、かなり賑わったと想像される。その後スキーブームが来て冬シーズン限定で栄えたが、スキーブームも終わっていまは静かな温泉宿である。 いま賑わっているのは駐車場と乗合タクシーである。交通事情が改善されて尾瀬の多くは日帰り圏となり、いま主流なのは朝早く戸倉に車を止めて乗合タクシーで鳩待峠へ向かい、尾瀬ヶ原を周回して夕方に戻るパターンと思われる。山小屋にも温泉にも、あえて泊まる必要はない。 寂しいような気もしないでもないが、それで静かな環境が保たれるとすれば悪いことばかりでもない。大規模ホテルも飲食店も土産物店も、ゆっくり休養するのに必要ではないのだ。 [Nov 7, 2024] 尾瀬戸倉バスセンターのすぐ隣にある尾瀬ぷらり館。温泉マークが示すとおり、尾瀬戸倉温泉が引かれている。
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