箱根仙石原温泉    湯河原温泉    クアハウス山小屋    健楽の湯    七沢温泉
広沢寺温泉    丹沢中川温泉


箱根仙石原温泉 [Jan 1, 2007]

箱根と一口に言っても、その範囲は広大である。よく知られているように現在の箱根火山は、旧箱根火山が爆発して陥没し、また爆発し陥没してできた3層式火山であるのだが、その旧箱根火山というのは高さも大きさも富士山並みのものであったらしく、山裾は現在の小田原、熱海、御殿場近辺まで及ぶ広大な火山だったとのことである。そして2回目の大噴火後の陥没によりできたカルデラ湖が芦ノ湖になる。

俗に「箱根十七湯」とも言われるようにたくさんの温泉場があり泉質もさまざまであるが、そのように広大な地域にわたることから、それくらいあって不思議でない。いまや正月の風物詩となった箱根駅伝の中で圧巻である国道1号線を小田原から芦ノ湖まで走る五区の山登りの約20kmの行程だけでも、湯元、塔ノ沢、大平台、宮ノ下、小涌谷・・・と温泉街を通り抜けていくが、これらはすべて箱根十七湯に含まれる。

さて、今回ご紹介するのは、上にあげた国道1号線沿いからずっと芦ノ湖側に入ったところにある、仙石原温泉である。小涌谷までの温泉が小田原厚木道路から1号線等を使うのに対し、仙石原はむしろ東名御殿場ICから乙女峠を通った方が便利である。金時山をはじめとする箱根外輪山(旧箱根火山の名残り)を背景に、ススキの群生する草原はなんともいえない雰囲気がある。

ここの定宿はKホテル(将棋のタイトル戦でよく使われる)。子供の小さいときは何度も行ったけれども、このところごぶさただったので年末に久しぶりに訪れた。

湯元や芦ノ湖あたりと比べるとややひと気がないように感じるが、周囲はほとんどが別荘や保養所で、しかもこのあたりは昭和初期というからもう70年も前にできた由緒ある保養地なのである。そして、ここの温泉は箱根十七湯に含まれているのだが、実は仙石原で温泉として湧出しているものではなく、海抜で約300メートル上にある大涌谷から引いている温泉なのである。

大涌谷の温泉は高温であるため、そのほとんどは水蒸気の状態で噴出する。この高温の水蒸気と、仙石原で湧出する井戸水(300メートル上までポンプで揚水する)を混合させることによってできる造成温泉を中心に、一部お湯として出る温泉を混ぜて、仙石原まで引き湯しているものなのである。地下で起こっている温泉の生成過程を地上で人工的に行っている、と考えると分かりやすい。しかし、あまりこのことを強調すると営業妨害になってしまうのかな(詳しくは箱根温泉供給株式会社のホームページをご参照)。

Kホテルの温泉も、家族風呂がこの引き湯でカルシウム-硫化物泉(硫酸塩泉)、大浴場が近年になってホテル地下から引いた単純泉と二種類である。引き湯の硫酸塩泉はかなり強い酸性で、肌にぴりぴりと刺激がある。そして造成した後には加水していないので、かなり熱い。案内書にも1回30分、1日1回の入浴が適当と書いてあるように、なかなかきつい温泉である。おまけにイオウ泉独特のにおいがかなり残るのだが、天然のピーリングというのか、肌がすべすべになる。

単純泉の方はそれほどの刺激もなくゆっくり入れるのだが、お湯の出口あたりにいるとかすかにイオウ泉のにおいがする。成分分析表をみるとSO₄イオンがかなり含まれていたから、おそらく土地柄もあり硫酸塩泉にかなり近いのではないかと思われる。そして、温泉の心地よさとおいしい地酒であっという間に眠れる。一年の疲れを取るにはぴったりの温泉といえるだろう。

[Jan 1, 2007]

一面すすきの仙石原。


湯河原温泉「こごめの湯」 [Jun 25, 2012]

さて、今回の山では頂上まで行けなかったものの、3時間ちょっと歩いてびっしょり汗をかいた。JR湯河原駅からバスに乗って、町営日帰り温泉「こごめの湯」へ。「子込めの湯」というくらいだから、子宝祈願の温泉なのであろう。いずれにせよ歴史のある温泉らしい。

HPに書いてあったバス停「公園入口」の先を左折、急坂を登っていく。ちなみに、その前の「落合橋」バス停からは30mほどしか離れておらず、しかも料金が20円違うので、落合橋から乗り降りした方がいいと土地のおばさんに教えてもらった。それはそうと、生半可な山道もかなわないくらいの急坂である。坂道発進しようとしたら相当苦労するだろう。

坂道をようやく登りきったところが「こごめの湯」になる。入口を入るとローカウンターの料金窓口があり、地下が浴室、2階が休憩所。食堂や自動販売機は現金精算なので、手許に小銭は持っておく必要がある。休憩室は広くていい景色で、飲食物の持込みは差し支えないようであった。入場料1000円は公営にしては高め。しかしそれだけの価値のある施設である。

さて、温泉。箱根とは山ひとつ隔てただけなのに、泉質が異なるのは面白い。硫黄臭もなく、アルカリ泉的なぬめぬめ感もなく、炭酸的なぴりぴり感もなく、むしろ食塩泉のようなあっさり感がある。後で成分表をみたら、やっぱり基本は食塩泉のようである。

それほど癖がないので、ゆっくり浸かることができる。見ていたら湯口から同じ湯が大浴槽と小浴槽に注がれていて、湯船の大きい分大浴槽がややぬるめ、小浴槽が熱めである。外の露天風呂もやや熱めである。

頂上まで行かなかったにせよそこそこ歩いて汗もかいたので、ぬるめのお湯でゆっくり足をマッサージする。この効果だったのか、あるいは負荷が比較的軽かったためなのか、翌日以降に疲れが残らなかったのは今回の成果であった。

お風呂の後は食堂で生ビールとカレーライスの昼食。町営のためか、うどん、そば、カレーライスくらいしかメニューがないのがちょっと残念。それでも、施設、温泉、景色とも、公営のレベルを超えたそこそこお奨めの日帰り温泉である。

[Jun 25, 2012]

湯河原温泉「こごめの湯」。町営の温泉としてはハイレベルの老舗です。24年冬には施設改修のため長期休業となるようです。


日向薬師奥・クアハウス山小屋 [Jan 20, 2014]

さて、今回の大山で日向薬師に下りた目的の一つは、日帰り入浴のできる施設「クアハウス山小屋」があったからである。今回は間違えてキャンプ場の道を下りてきてしまったけれど、予定していた九十九曲りを下りてきても同じ道に出る。WEBで見るととてもきれいな施設なのだ。

受付はレストランの横、お風呂は階段を下りて地下1階にある。斜面にある建物なので、下の写真のようになっていて地下とはいっても陽が当たる。そんなに大きな施設ではなく通路はちょっと狭いのだが、お風呂の隣には休憩室もあって休めるようになっている。

大山から下りてきた登山客がよく利用しているようで、お風呂には先客が3人いた。カランは6つあるし、浴槽は7、8人は楽に入れる大きさだ。温泉ではなく井戸水を沸かしているということだが、水量が豊富なのだろう、お湯はかけ流しで温泉のような雰囲気である。何より、掃除が行き届いていて施設が清潔なのがいい。

汗をかいた体を洗ってから、ゆったりと湯船につかる。くせのないお湯だが、しっとりと肌触りがよい。井戸水とすれば水道代はかからないが、沸かすには燃料代がかかる。かけ流しにしていて採算はとれるのだろうかと考える。そんなことは客が心配することではないが、「燃料代がかかるのでお湯を使うな」という温泉もあったのだ。

風呂の後は階段を上がってレストランへ。中央に大きな薪ストーブが置かれていて暖かい。WEBに載っていたカレーライスを注文。メニューを見ると、他にも「地元産鹿肉味噌漬け」や「岩魚塩焼き」などがある。ビールと一緒に頼んだらおいしそうだが、この時は人間ドック前の禁酒の期間なので、じっと我慢したのである。

厨房の奥からは何か炒める音がして、しばらくして出てきたカレーライスのライスは、茸の入ったバターライスだった。せっかくなのでカレーがかかっていない部分を食べてみると、それだけでとてもおいしい。カレールウも業務用レトルトではなく、手作りのものである。最寄りのバス停から歩いて30分も奥に、こういう本格的なお店があるのは驚きである。

日向薬師まで帰る途中に、同じく「山小屋」という屋号のお店があった。こちらはます釣り場を経営していて、WEBをみると同じ経営者(家族)でやっているようだ。今度はビールの飲める時に来てみたいと思った。

[Jan 20, 2014]

クアハウス山小屋。といっても宿泊山小屋ではありません。


店舗内部。お客さんがいて撮れなかったが薪ストーブがあり、とても気が利いた内装。


松田町健康福祉センター 健楽の湯 [Jan 4, 2016]

一富士二鷹三茄子といって、新年を彩るおめでたいものといえば富士山である。というわけで、新年はじめての月曜日である1月4日の記事は、富士山を目の前に大きな湯船に漬かることのできる松田町健康福祉センター「健楽の湯」についてお届けしたい。 新松田駅には西丹沢方面や寄(やどりき)からのバスが走っているが、「健楽の湯」は駅から歩いて十分ちょっと、川を渡った南側にある。この川は丹沢から流れている四十八瀬川で、この先で酒匂川と合流する。

実は初めて行った時に道順がよく分からなかったので、新松田からタクシーを使った。「健康福祉センターまで」とお願いしたところ、「どこの町の健康福祉センターだ」と言われたのにはちょっとびっくりした。地図を持っていたので見せた。帰ってから調べたが、このあたりはしばらく先まで松田町なので、わざわざ御殿場市や秦野市の健康福祉センターに行くならそう言うだろう。

あるいは、1000円以下で着いてしまうので嫌がらせをされたのかもしれない(リュック姿で山から下りてきたので、それも嫌だったか。それほど汚れてはいなかったと思うが)。地元の人には申し訳ない言い方だが、さすが雲助の本場である。タクシー会社も記憶しているが、新年早々気分が悪いことを書いても仕方ないのでここまでにしておく。

ともあれ健康福祉センターに着くと、入口のところに「健楽の湯は3階です」と大きく書いてあって、登山客ウェルカムである。入ってすぐのエレベーターで3階まで上がると、ワンフロアすべてが「健楽の湯」であった。受付横に入浴券販売機がある。500円と格安である。入って左右に廊下が通っていて、右に進むと休憩室、左が浴室である。

入浴券を受付の女性に渡すと、「貴重品がありましたら、鍵付きロッカーに入れてください。100円は戻ります」とのことなので、財布や携帯はいったん右に進んでロッカーに置かせてもらう。その後に逆方向へ廊下を進んで脱衣所へ。鍵付きロッカーはなくすべて脱衣篭である。隅に空きスペースがあったので、リュックを置かせてもらう。

施設はまだ新しく、掃除も行き届いていてきれいである。お風呂も温泉ではなさそうだが、広い湯船にジャグジーが付いていて、快適である。入浴料は安いのに、シャンプーやボディソープも備え付けてあるのはありがたい。

丹沢の山小屋は水場がなく、風呂などとんでもない話なので、麓に下りて入るお風呂はたまらなくうれしい。2日分の汗を流し、広い湯船に漬かる。目の前には富士山がそびえる。五合目あたりから下を遮っている山塊は、箱根山だろうか。そこから右手に続く山並みが西丹沢。富士山の上の方は、前の週に積もった新雪で真っ白である。

湯船の中でゆっくり両足をもみほぐす。前日の大倉尾根では大バテしてしまい、金冷しから尊仏山荘まで登るのに1時間かかってしまったくらいだし、この日は鍋割山からバスの時刻を気にしながら大急ぎで下りてきたものだから、すでに両足に疲れがたまっていた。でも、こちらのお風呂でゆっくりさせてもらったので、家に帰るまで何とか持ちこたえることができた(翌日以降、太ももがしんどかったが)。

富士山は、浴室から反対側にある休憩室からもよく見える。この施設には食堂や売店はないのだけれど、自動販売機が置いてあるので飲み物は調達することができる。見ていると、松田町の方達は自宅から何か持ってきて、こちらの休憩室で飲食していたようである。公共施設なのでそうしたことが可能なのであろう。

私も、残った非常食と自動販売機の飲み物で、お昼とさせてもらったのでありました。 [Jan 4, 2016]

健楽の湯エントランス。終了時間がやや早いので、山小屋泊まりの翌日昼間に行くのがよろしいかと思います。


健康福祉センター全景。3階ワンフロアが健楽の湯。浴室・休憩室からはどーんと富士山が見える。


七沢温泉 [May 9, 2017]

鐘ヶ嶽に登った後、クアハウス山小屋に下りる予定が尾根を間違えて広沢寺温泉に下りてきてしまった。そのまま舗装道路を歩いて行くと、七沢荘の看板があったので立ち寄り湯に寄って行くことにした。七沢温泉と書いてあるが、七沢温泉街とは少し離れていて、広沢寺温泉入口バス停から歩いて5分である。

広沢寺温泉へのバスは3時間に1本しかないが、30分歩いてここまで来ると、別系統のバスが通っているので1時間に何本かある。時刻によっては待つことになるが、3時間待つということはない。あまり成算はなかったのだが、尾根を隔てた日向薬師からはバス便が多いので、山を下ってみたのは正解であった。

こちら七沢荘は宿もやっていて、受付から温泉までは客室(というよりは部屋と言った方がしっくりくるが)の前を延々と歩く。バス停付近から受付までかなり歩かされたが、その分戻っているような感じである。立ち寄り温泉の受付は別に作った方が客には親切だが、おそらく人手が足りないのだろう。

脱衣所はちょっと雑然としている。それに、キャパシティに対して来場者が多い。カランは6つほど狭い場所に固まっていて、浴槽も7、8人入っているので空いたスペースが少ない。内湯の他に露天風呂もあるようだが、行かなかった。

泉質表をみると、メタケイ酸の含有量が多いようだ。最近の泉質表は、はっきり△△泉と書いてないので、イオン表をみて判断するしかない。食塩泉、重曹泉、アルカリ性単純泉それぞれの要素があるようにみえる。奥多摩とは山の成り立ちが違うためか、泉質も異なるようである。

最近、職業訓練所でボイラーの勉強をしたので、シリカには敏感である。シリカとは二酸化ケイ素のことで、水の中に含まれるのでボイラー中で濃縮され腐食や加熱の原因となる。これを除去するのはなかなか難しく、ナトリウムやカルシウムを取り除く軟化装置ではシリカは除けないのだ。シリカが酸化したものがメタケイ酸イオンである。

さて、その肌触りだが、記憶をたどっても同様の泉質を思い出すのは容易ではない。若干のすべすべ感があるがそれほどでもなく、刺激も少ない。お湯もそれほど熱くない。鉱泉を沸かしているようである。硫黄臭などもない。昔入ったことのある藪塚温泉に似たような気もするけれども、メタケイ酸に引っ張られてそう感じたのかもしれない。

男湯と女湯が分かれる場所にすのこ敷きの休憩所があって、それもただ置いてあるのではなくて、しっかり固定してあるのである。そしてその横に自動販売機が並んでいるのだが、お釣りを落としてすのこのすき間から落ちてしまった。持ち上げて取ることができないのであきらめたのだが、結構そういう人が多くて、すのこの下は小銭がたまっているのではないかと思う。

[May 9, 2017]

七沢荘エントランス。広沢寺温泉は3時間に1本しかバスがないが、ここまで下りてくると他の系統のバスに乗ることができる。


広沢寺温泉 [Mar 25, 2018]

この日のスケジュールを予定どおり終了して広沢寺温泉まで下りてきたのは午後2時半前。3時間に1本のバスが出るのは3時10分だから、あわただしいけれどもひと風呂浴びていくことができる。去年来た時にはバスの時間が分からずここを素通りして七沢温泉まで下ったが、今回はこちらにお伺いするつもりでちゃんとHPも調べておいた。

広沢寺温泉は林道から建物が見えるのだが、いったん通り過ぎて側道を戻り、一軒宿で風情のある建物の正面に出る。バス停は宿の真ん前にあるここが始発なので、厚木まで40~50分かかるが座っていければ問題はない(座っていければ、だが)。

玄関を入ると、廊下からその先から人でごった返していた。すぐには気付かなかったが、梅ノ木尾根ですれ違った20人超の老人グループである。20人もまとまって休める場所がないコースを歩いてきたあげくに、こんな小さな旅館の日帰り温泉に大挙して押し寄せていたのである。

ようやく仲居さんを見つけて、入浴料の1000円を払う。HPに立寄り入浴は露天風呂だけと書いてあったのでそれは承知していたが、なんと脱衣所も外にあって、露天風呂の浴槽に面して棚が置かれているだけであった。もっとも、浴槽から見える位置にあるので、鍵付きロッカーにしなくてもいいのは安心である。

カランは3つしかなく、浴槽も6~7人しか入れないから、それほど広くはない。落ち葉やらいろんなものが落ちているのは露天だから仕方ないとはいえ、1000円払ってこれでは少々物足りない。つい十日前に松山で入ったキスケの湯が、650円で施設完備だったのに比べるとえらい違いである。

泉質は強アルカリ泉と書いてある。なるほどすべすべする。沸かしているはずだが湯温がぬるく感じるのも露天のせいだろうか。外には老人パーティーが20人以上で休憩スペースを占領しているが、露天風呂は3、4人しか入っていない。みんな最初は、これで1000円取るのかという顔をしているが、お湯は決して悪くはない。

山の中とはいえ、厚木市街から40分ほどで来れる訳だから、宿泊需要がそれほどあるとは思えない。料理がすごいのならともかく、名物が猪鍋ではちょっと難しい。ならば日帰り入浴で集客するしかないと思うのだが、これでもう一度来ようと思う客がどれだけいるだろうか。

すぐ近くの七沢温泉の方が、まだ日帰り入浴向けにそれなりに整備されていたのに、ここの宿は内湯は使わせないし、露天風呂の設備は海水浴場のシャワー並みである。それでも、客が4~5人というのであれば仕方がないが、大人数入れてロビーも休憩室も一杯なのである。

幸い、体を拭いて着替えて出て来ると(繰り返すが、更衣室も戸外である。露天だから当然といえば当然だが)、大人数の老人パーティーは引き上げた後だった。がらんとした休憩室(ここも戸外である)に座って、自販機の飲み物でひと息つく。さっきの老人客はテーブルの上にそばのざるだの皿だの置いて帰ったので、たぶん食べ物を頼むことができるのだろう。

定刻10分前にバスに向かうと、すでにバスは止まっていて、驚いたことに座席は件の老人連中がすべて占めていて一つも余っていない。こんな大人数でマイナールートを歩きに来て非常識とは思っていたが、まさかバスの座席を全部占領するとは思わなかった。近くに駐車場があるし、これだけ大人数なら別途手配するのが当然だろう。

大人数のグループには以前から不愉快な思いをさせられてきたが、自分達が良ければ他人はどうでも構わないという主張をこれだけ続けられると、もうどうしようもない。バスの中では、じいさんは眠りばあさんはずっとしゃべり続け、一般登山客は大きなリュックを持って立ちっぱなしである。

西東京バスなら増発させるのだが、神奈中バスはそんな機転も利かず、すぐ後ろをがらがらのバスが走っているのにそのまま厚木まで走り続けた。こんなことになると分かっていたら、広沢寺入口まで歩くか、途中で下りて後のバスに乗り換えるべきであった。でも車内は激コミで、途中で下りることもできなかったのである。

[Apr 23, 2018]

広沢寺温泉玉翠楼。悪くない温泉ですが小規模なので、20人とかのグループで日帰り入浴に来るのは、宿的にはどうか分からないが客的にはどうでしょうか。


丹沢中川温泉 [Nov 26, 2018]

檜洞丸に登った日、後泊で中川温泉に泊まった。前泊が約4千円で済んだのと、この宿が5千円で取れたので、合わせて1泊分の費用という計算である。

泊まったのは「丹沢ホテル時の栖(すみか)」。同社のWEBサイトの予約ページには、「見つけたあなたは超ラッキー。当日限定朝食付きプラン」というのがあって、当日限定で1人だと5,000円で泊まれるのである。

当日限定だから、その日に空室がないと泊まれない。だから「見つけたあなたは超ラッキー」なのだが、月曜日泊という平日であり、多分空いているだろうと朝のうちに見たところ、幸い空いていた。さっそくクリックして当日予約を押さえた。

ただし、このプランでは夕食はつかない。おそらく当日予約だと食材の手配が間に合わないためと思われるが、周囲に飲食施設はないので、自分で用意しなければならない。

それもあって、今回はあらかじめ夕食用の食糧も準備していた。昼は活動食のみで過ごし、アルファ米のドライカレーと、チョコレートワッフル、レモンチキン、アーモンドとカシューナッツを夜に回す予定だった。それに森伊蔵をスキットルに入れて持ってきた。これで何とかなるだろう。

実際にホテルに着いてみると、自販機も売店もちゃんとあって、カップヌードルもつまみ類も置いてあったのでそんなに心配することもなかった。とはいえ、行くまではどんな宿かは分からない。売っているけどバカ高いという宿だってある。

幸い、ここの宿は価格も良心的で麓の値段とほとんど変わらなかった。スーパードライ(500ml)400円と、コーラ160円、クーリッシュ140円を買って部屋の冷凍庫付き冷蔵庫に格納、まず温泉に入る。

中川温泉はアルカリ性単純泉で、pHは9.46、かなり強いアルカリ性である。湧出温度は30℃ということだから、加温している。アルカリ性というと、のめこい湯のようにめぬめしたお湯かと思ったらそんなことはなくて、それほど癖のないさらさらしたお湯である。

貼ってあった泉質表によるとナトリウムイオンと硫酸イオンが多く含まれているが、色やにおいはない。効能があるとされるのは、神経痛やリウマチ、打撲といったポピュラーなものの他、自律神経失調症、不眠症、うつに効くと書いてある。

山梨県に近い温泉はすべて「信玄のかくし湯」と呼ばれてしまうのだが、ここもそうである。甲相国境尾根より南にあるのでここは古くから相模であり、後北条氏の地盤ではないかと思うのだが、細かいことは言わないでおこう。

丹沢と奥多摩は近いけれども地勢的に異なる由来を持つ。500万年前(!)に丹沢山塊が後から移動してきて本州にぶつかり、さらに伊豆半島が後からぶつかって(100万年前!)、現在の地形となった。比較的新しい時代なので(恐竜で有名なジュラ紀は1億5千万年前)いまなお造山運動は続いていて、そのため山容が安定せず通行止めの箇所も多い。

部屋の窓からは、まっすぐに立ち上がっている裏山が見える。何ヵ所かで斜面が崩壊して、下には落石が積み重なっているのが見える。山を越えた向こう側が玄倉川で、通行止めになっている玄倉林道もきっとこんな状態なのだろう。

さすがに標高差1000mを越えるこの日の登り下りは響いて、アルファ米ドライカレーと森伊蔵、現地調達のコーラフロートで十分満足した。午後7時半には電気を消しておやすみなさい体制に入ったが、部屋の外からしばらくにぎやかな声が聞こえてきた。考えてみれば山小屋ではなく普通の温泉宿なので、まだ宵の口だからこんなものである。

翌朝の朝食は7時半と遅めなので、朝もう一度お風呂に入りに行った。前の晩もお客さんがいてにぎやかだったが、朝も私の他に2人入っていて、朝食会場もテーブルが一杯であった。当日限定特別プランがあるくらいだからさぞかしすいているんだろうと思っていたら、結構賑わっている宿なのであった。

朝食がまた気が利いていて、ご飯、味噌汁、アジの開き、お新香、簡易コンロで湯豆腐が付いて、おかず3品は切干大根、まぐろ山掛けとほうれん草白和えであった。5,000円でここまでしていただいては、かえって恐縮するほどでありました。

[Feb 4, 2019]

中川温泉にある丹沢ホテル時の栖(すみか)。ホテルの名前でバス停があり、歩いて5分くらい。


「見つけたあなたは超ラッキー」の当日限定プラン。豪華な朝食付きです。


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