リスタート  (ポーカーの奥深い世界第28話) [Sep 20, 2006]

先々週に出場予定だったテニアン・ポーカートーナメントに無念の不戦敗を喫した結果、9月前半は想定外の全休となってしまった。さらに先週から急に寒くなったのにタオルケットだけで寝ていたものだから風邪をひいてしまったようで、体がだるくて頭がぼんやりする。そんなわけで月に一度のリゾポカ(リゾカジポーカーオフ)が久々のポーカーリスタートとなったのであった。

9月17日日曜日、会場である東日本橋DUKEに着くと、いつもより人が少ない。3連休のまん中でいろいろ予定のある人もいるだろうし、我中軍団はすでにオーストラリアに飛んでいる。実は私も体調がよくないのでドタキャンも考えたのだが、朝SNSをチェックするとさまよい人さんが昨晩徹夜でウィンマカオで打った後今日の午前便で帰国し、そのままDUKEにいらっしゃるというではないか。これは休む訳にはいかないと、やはり成田空港に近いわが家から駆けつけた訳である。

4テーブルでのスタート。珍しく1番テーブルとなる。勝ち残ればファイナルテーブルとなる卓である。ディーラーの2つ下で、上家が大阪ポーカーオフでもご一緒しているWSOP出場者pollyさん、下家がまるさん、以下順に、せりかっち、めぇめぇさん、saekoさん、Lupinさんという勝手知ったる面々である。そして今回は出場者が少ないため、普段は150点スタートのところ250点スタートである。久々にカードにさわる私としては、ゆったりした序盤戦は望むところである。

ブラインド1-2でスタートして5-10のラウンドが終わって休憩になるまでの1時間、もっとも大きいベットがsaekoさんの50点というのだから、いかにゆったりした前半戦であったかお分かりいただけると思う。もちろん誰も飛ばない。私について言えばスタート直後にAや絵札が続けて入ってきたことがあったのだが、私以上にAK、AQ、AJが入りまくるせりかっちにやられ続け、かなりのチップを献上してしまっていた。それでも、まだ200点ある。普段なら100点でそろそろ飛び込み所を探らなければならないのだが、これならまだまだ余裕である。

休憩後に第4テーブルがブレイクとなり、アグレッシブな傍楽さんが入ってきてから様子が一変する。いきなりオールインの嵐である。こうなると動けない。とにかくAやKは必ず2か3を連れてくるのである。リンプインしたら最後誰かにオールインでかぶせられるのが見えているだけに、中途半端な手では行けない。ペアなら何とか歯を食いしばれるのだが、ハイペアが全く来ない。2周、3周と下り続ける。BBになると、決まってせりかっちやLupinさんがスチールをしかけてくるが、じっとがまんである。ブラインドが25-50に上がってようやく来たのが66。これは渾身のオールインでスチール成功。そして次の手は88である。

ここは押すべきか。手元のチップを確認する。ポジションはミドル。UTGからチップ量に余裕のあるLさんがコールで入っている。このLさん、前回のリゾポカで私の56sでの3倍レイズにオールインしてきた方である。ここでオールインしても、下りてもらえないことは明らかである。フロップが開いてしまえば、88はそれほど強調できる手ではない。迷った末コール。その後はBB、Lさん、私とリバーまでチェックで回したのだが、Lさんの手はなんとQQ!オールインしていれば即死だった。間もなく休憩となったが、残りのチップはわずか緑3枚(75点)である。

休憩後初手がAT、この日Aが連れてきた1番いい相手である。ショートオールインでBBとの勝負となり、Tが落ちてほっと一息。そして次の手はAK。いま入ってきたチップをそのままオールイン。フロップでKが落ちて逃げ切り、チップは500点を超えた。50-100だから500点は決して安心できる点数ではないのだが、まだ2テーブル残っているということは、ほぼ平均チップ量なのである。だから私より先に飛び込む人たちが何人かいる。そうこうしているうちに残り9人となり、何ヶ月ぶりかでリゾポカのファイナルテーブルに残ることができた。

さて、ファイナルテーブルになると改めて席決めである。私の位置は5番、9人残りだからディーラーの正面となった。ここで思わぬ問題が発生したのである。ディーラーの女性は最初から同じ方で、私は二つ左の位置だったのであまり気にならなかったのだけれども、かなり胸がゴージャスな方なのである。序盤でpollyさんが、上家のアクション前にカードを捨ててしまい、私がそれに続いて「まだです」と注意されたことがあった。その時pollyさんが「ディーラーさんの胸が大きすぎて向こう側が見えなかった」と言い訳したので、おもしろい冗談だなあと思っていたのだが、冗談ではないのであった。

何といっても真正面なものだから、普通に前を向いているだけでも「あいつ何を見ているんだ」と言われそうだ。そして、私はハンドの良し悪しが顔に出ることでは定評がある。だからいつも正面やや下を見るようにしているのだが、そうするとまさに胸元をじっと見ているような具合になってしまう。だからあっちを見たりこっちを見たり、俗に言う挙動不審ということになる。これは困った(全然困っていないという噂もある)。ロンドンハーツのチラ見芸能人の気持ちがよく分かった。

そうしているうちに思い出した。ファイナルテーブル用の秘密兵器を持ってきていることを。いったん席を外してデイパックからそれを取り出す。レイバンのサングラス、しかも度つきである。私は極度の近視かつ老眼で普段は遠近両用メガネをかけている。しかしそれでは顔色を読まれてしまうので、外から目の表情がみられないような濃い色のサングラスを買ったのである。本来の私の目に合わせるとプラスチックレンズになってしまうのだが、プラスチックでは外から見えるので、ガラスのレンズで度は付けられるだけでいいと注文した。そのため度付きながら0.1あるかないかなのだが、それでもボードは見える。ただし向こう側の人はぼやけてしまうので、この場合はちょうどいい。ギャラリーの傍楽さんには見事見破られてしまったが、とにかくこれで落ち着くことができた。

ファイナルテーブルでの順位はもちろん下の方。チップを持っているのはちくわさん、R子さん、Lさんあたりである。ちくわさんはチップ長者なので、オールインを連発してくる。Lさんは例によってコールで入るのだが下りてくれない。なかなか仕掛けられないうちに、ブラインドは75-150に上がってしまう。手持ちチップは400点くらいに減ってきているので、そろそろ飛び込みどころである。UTGでQQが来る。本日一番のハンドである。ミニマムレイズとほとんど差はないけれども、とにかくオールイン。ブラインドがもらえるだけでも上々と思っていたのだが、Lさんにコールされ、KONKONさんにも続かれる。オープンすらできない、まさにまな板の鯉状態である。

フロップハイカードでが落ちる。問題は2枚落ちているスペードだけだ。ターンが6c。すでに6sが出ているのでQフル完成である。もうフラッシュは怖くない。ここでLさんがベットしてKONKONさんダウン。66以外なら勝ちという場面でLさんはA持ちだったので、一気にトリプルアップに成功して持ちチップは1200点を超えた。しばらくしてKONKONさんがゲームオーバーでベスト5(イン・ザ・フルーツ)確定。リゾポカにおける自己最高記録である。

この時点で残っているのはちくわさん、R子さん、Lさん、私とpollyさん。pollyさんは全く目立たないが確実にスチールを決めてここまで残っている。R子さんは確実にチップリーダーの位置を守っている。Lさんは鬼のような引きでチップをますます増やしつつある。ちくわさんは前回のめぇめぇさんに続きマネージャーにBBSTARさんを迎えてオールイン攻勢をかけてきたが、これがやや裏目に出てこのあたりでちょっと減速しつつあった。

ブラインドは100-200から150-300に上がり、ここでディーラーがビッグさんに交替する。どうもこれで、運が逃げてしまったようだ。私のBBでちくわさんがオールイン。「上に575」とビッグさん。コールしても飛ぶことはないけれど、2、300点しか残らないからほぼ勝負圏外に去ることになる。しかしブラインドが大きいので、ここはなんとかコールしたい。SBまでみんな下りて、手をみるとJJである。これは行くしかない。「コール」すべてのチップを前に進める。ちくわさんの手はATo。あの頻度でオールインを連発しているのだからAxでも行っているのではないかと思っていたので、1オーバーは予想通りである。この時点で70%の勝率、ここを勝ってトップ・・・、と次の展開を思い浮かべてしまう。

フロップはすべてrag、ターンでも何も出ない。この時点で勝率は93%。勝ちを確信していたのだが、リバーで燦然と輝いていたのはスペードのAであった。そういえば前回のリゾポカでも、BBSTARさんが付いためぇめぇさんはリバーまくりを連発していた。ギャラリーは大歓声。とんだ敵役になってしまった。残りのチップ量ではいかんともし難く、そのままゲームオーバーで5位入賞での終了となった。優勝したのは終始目立たない位置にいたpollyさんで、最後はちくわさん、R子さんに逆に圧倒的なチップ差をつけてしまった。さすがにWSOPに出場する打ち手である。近々また大阪に行って、雪辱しなくてはなるまい。

こうして、テニアン不戦敗以来のリスタートはまずまずの結果に終わったのだけれど、考えてみればAA、KKは来ず、AKも一回だけ。QQは勝ったがJJは負けといったように、長く残った割にはそれほどいいハンドに恵まれたという訳ではない。なのになぜ残れたのかというと、特にブラインドが上がってからは相当に手を絞ったからだと思う。A9とかKQとか平気で下りていたので常にショートスタックだったけれども、ここで飛び込まなければ、というところでまずまず水準以上の手が来てくれた。でも、リゾポカのようないろいろなメンバーの揃う大会で勝つには、もうあと一歩何か特別のものがなければならないと思った。少なくともリバーで残り7%が出てしまうようでは、今回はそこまでの運だったということだろう。いつか私に運が向いた時には、ミスなく勝ち残れるようさらに精進しなければならない。

[Sep 20, 2006]

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