初入賞  (ポーカーの奥深い世界第3話) [Jun 20,2005]

18日の土曜日はストラドル杯ポーカーの日。例によってakiさん、ビッグさんのご案内により、JPPA上野ルーム、通称上野虎の穴に向かった。

前回の記事で、私の手のいい悪いは確実に読まれているのに、いい手であっても誰かが向かってくることについて述べたところであるが、その理由について考えていることを書かなかった。だが、くやしいからといってここに書かなければ、いつか誰かが私の記事を読んでポーカーに興味を持ったときに「何だもったいぶって」と言われそうなので書くことにする。つまり私はテーブルの他の人達にとって、標的、狙い目、もっと端的に言えばカモだったのである。

たぶんポーカーの上級者は、席に着いて誰がどの位置にいるかを見た瞬間、そのテーブルにおける戦略をあらかた決めてしまうのである。トーナメントにせよライブにせよ、ポーカーというのはゼロサムゲームであり、自分がプラスになるとすればそれは確実に誰かが負けた分なのだ。そうであれば、いま座っているこのテーブルで、どのようなシチュエーションで、誰からチップを取ることができるか、考えていないはずがない。

だから、標的として、初級者でありいろいろなテクニックを知らない上に、顔をみれば手の内が読めてしまう私などは、最もくみし易い相手とみられても仕方ないのである。ポーカーでは、仮に手札にAAと最強の手がきても、リバー(最後の1枚)まで粘られてしまうと必ずしもナッツ(場の5枚からみた最強の手役)にはならないことが多いからである。

 

さて、そこまでは分かったものの対策を立てなければ何にもならない。2週間の間、ない知恵を絞って対策を考えた。前回のように、ブラインドベットを払っているうちにジリ貧というのは最悪の選択であろう。ただでさえ狙われているのに、相手の半分もチップがなければ、相手は余裕をもって対応してくる。だとすれば、相手の体制が整わないうちに先行して、狙われそうな相手より常に多くのチップを持っていること。それでもなお勝負をかけてくる人がいれば、序盤であろうとオールイン覚悟で賭け金をつりあげること、をまずやろうと思った。

 

この日の午後のトーナメントは、セブンカードスタッドである。最初の2枚のカードがホールカード(裏返しでその人しか見れない)、次の4枚のカードは各自にそれぞれ表にして配られ、その1枚ごとにベッティング・ラウンドがある。最後に1枚再びホールカードで、合計7枚のうち5枚を使って作った役が高い人が勝ちとなるのはテキサス・ホールデムと同じである。ただし、共通のカードというのはなく、各自に配られた7枚であるので、自分にいい手が来ている時に相手もいい手だという可能性は、テキサスホールデムよりは低い。

幸い、場のカードで2ペアができてしまってみんな下りてくれたり、ホールカードが3枚すべてAだったり、いい回転でゲームが進み、狙っていたように常に平均チップ額(チップ総額÷現在生き残り数)の2、3千点上のレベルを維持することができた。3テーブルで始まったトーナメントであるが、決勝テーブルまで生き残り、最終成績は5位!みごとに入賞点を獲得することができたのである。日本だから名誉だけだが、外国だとここまで残ると何かもらえるくらいの順位であり、かなりうれしい。

スト杯ミニのセブンカードスタッドの話を続けると、このトーナメントの決勝テーブルで最後に残った6人は、akiさん、hatterさん、doyleさんの世界大会上位組と、Yさん、せりかさん、私のリゾカジ組。最初の頃チップリーダーだったはずのYさんが惜しくも脱落した段階で、上位3人のチップ量はたくさん、せりかさんと私のチップは合わせて彼らの6~7割といった状況である。

このまま個別で撃破されていては脱落は時間の問題である。ここは上級者のつもりになって考えて、私よりチップ量の少ないせりかさんを狙うことにした。幸いせりかさんは私の上家であり、彼女のベットorフォールドを見てから対応を決めることができる分、私の方が有利である。しかし、この日のせりかさんはツキまくっている。序盤戦では先週のWSOP(World Series of Poker)で世界9位の成績をあげているhatterさんとのヘッズアップ(1対1)勝負を制し、「世界8位!」とテーブルのみんなに賞賛されていたくらいである。だが、彼女のチップを奪わなければ、私の命もないのである。

ラウンドが進みブラインド(強制ベット)がきつくなってきたところで、せりかさんが強制ベット(1枚目の場のカードが最も低い人が強制ベットとなる)。少し考えてオールイン。私の手は手札2枚と場の1枚ですでにKペアができている。勝負はここしかないので、私もオールイン。あとの3人はいずれもフォールド。もしかしたらコールが来るかもしれないと思っていたのだが、よく考えればコールなんかする訳がない。彼らにとって勝負はあとの2人との関係だけであり、子供2人に付き合って万が一にもチップを減らすリスクをとるはずがないからである。

私の方が少しチップが多かったので、負けてもまだ少し生き残ることができるが、それでもここで負ければ実質的にジ・エンドである。カードオープンで私のKペアに対し、せりかさんはQハイ。これはまず勝ちだろうと思っていたら、とんでもないことが起こった。せりかさんはあとのオープンカード3枚で、すべて9を引いたのである。もちろんラストのホールカードでKを出せばまくれるが、この流れではとうてい無理である。こうして、私の初入賞は5位で終ったのであった。

これで運を使い果たしてしまったらしく、夜の部のテキサスホールデムでは、4テーブルで始まったトーナメントの最初のテーブルで敗退してしまった。作戦としては同様で、序盤で先行を狙ったのだが、A+絵札でポットに参加しても全くAが落ちてこないのである。5000点持ちスタートで3000点位まで減ってきて、最後Q7oでオールイン。K8oで受けられて、あえなく終了となった。テーブルの誰かが、「今日は○○(ディーラー)は、A出さないんだよ」と言っていたが、そういう場の流れが見えなかったのが敗因であった。

ただ場の流れだけをみていてもダメだし、場の流れをみなくてもダメである。やっぱり、ポーカーは奥が深い。結局そのまま朝まで上野ルームで過ごし、十何年ぶりの徹夜となってしまった。

[Jun 20,2005]

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