青池保子「エロイカより愛をこめて」    赤星たみこ「なかよし」
あしべゆうほ「悪魔の花嫁」    亜月裕「伊賀野カバ丸」
池田理代子「ベルサイユのばら」    いしいひさいち「がんばれタブチくん」
一条ゆかり「デザイナー」    楳図かずお「肉面」    大島弓子「綿の国星」
書評目次   COMICか~さ   COMICSた~は   COMICSま   COMICSや~わ


青池保子「エロイカより愛をこめて」

1977年より月刊プリンセスで連載開始。小学館、講談社、集英社に対して後発の秋田書店が少年チャンピオンの売上を一気に伸ばしたのは「ガキデカ」であるが、少女誌においてはなかなかヒット作品が出なかった。そしてようやくプリンセスをメジャーにしたのが青池保子の一連の作品である。

この「エロイカ」は「イブの息子たち」(美青年キャラ続出のHOMOマンガである)に続くプリンセスでの連載で、「イブ」当時作者は「セブンティーン」でも連載を持っていた。それが「七つの海七つの空」である。

そして、「エロイカ」は連載開始当初は「イブ」の路線を引き継いだコメディーだったのだが、いつの間にか「七つの海」の硬派路線となり主人公すら変わってしまったのである。このシリーズの最新作は2004年というからすでに連載開始から30年近くになる。

エロイカとは英国貴族でありながら盗賊も兼ねているドリアン・レッド・グローリア伯爵(ちなみにゲイ)のことで、有能なボーナム君やドケチ経理士ジェイムス君を引き連れて厳重な警備を破り美術品を手に入れていく、というのが連載当初のコンセプトだった。

ところが途中から出てきた「鉄のクラウス」ことNATOの情報将校クラウス・ハインツ・フォン・デム・エーベルバッハ少佐がキャラ的に完全にエロイカを上回ってしまい、それ以降は彼が部下A(アー)からZ(ツェット)までを酷使して世界のスパイと渡り合うというストーリーになってしまった。

その間、東西ドイツは統一され、ソ連はCISとなりさらに社会主義体制は崩壊したのだが、仔熊のミーシャ(ロシア)をはじめとするライバル達は健在である。

エロイカは「七つの海」のレッド(英国の海賊でスペイン無敵艦隊を破るのに貢献)の子孫で、鉄のクラウスは同じくティリアン(英国海軍から軍艦ごとスペインに亡命して無敵艦隊に合流)の子孫ということになっている。

ラテンの血を引くティリアンが、どうやって400年くらいでばりばりゲルマン民族(ドイツ)の鉄のクラウスの先祖になれるのかは疑問だが、まあそういうことになっている。実は「七つの海」もレッドが主人公だったのだが、どうみてもティリアンの方がキャラが立っていて、実際続編ではティリアンが主人公となっている。彼女の作品には同じような傾向があるようで面白い。

部下Z(ツェット)は後に集英社にも登場する(LaLaだったかなあ?)など出版社の枠を超えての人気シリーズである。スパイだからその位は簡単なのかもしれないが、部下も含めて英国のエロイカ達とドイツの鉄のクラウス達が円滑に会話できてしまうのはちょっと不思議。


クラウス・ハインツ・フォンデム・エーベルバッハ少佐。いまだに言える。先祖がスペイン無敵艦隊司令官、親父がナチス戦車隊のドイツ貴族。

[Jun 1,2006]

赤星たみこ「なかよし」

GWに「ハケンの品格」のDVDをずっと見ていたら、この作品を思い出した。漫画アクション系の雑誌(アクションキャラクターだったような)に、1990年頃掲載された作品。

主人公の夏奈子(かなこ)は中学3年生。学校では母子家庭の不幸な少女を売りにしているが、体育以外の勉強はそこそこできる。そして母のまき子は、高校中退で加奈子を生んだシングルマザー、かつ万能家政婦なのである。

家政婦協会では「特A」で、難しい派遣先を任されるがお給料も高い(このあたり、ハケンの品格とよく似ている)。何ヶ国語も話せて、一人で何十人分のパーティーのお料理も作ってしまう。もちろんお掃除お洗濯はてきぱきこなし、おまけに手品やピアノまでできるのであった。

一方で家に帰るとまき子は一切の家事をせず、主婦の仕事は中学生の夏奈子がしなければならない。「私に家事をしてほしかったら、お給料を払いなさい」と言うのである。

時折パンクファッションで出勤するまき子を近所の人は「水商売のお勤め?」と噂するし、夏奈子も同級生に見られたくなくて面談の通知を捨ててしまうのだが、それを察知したまき子が学校に現れて大暴れ・・・、という展開である。

この物語のクライマックスは、まき子が「一生の不覚」という夏奈子の父親の登場である。マザコンのお坊ちゃまだったはずなのに、焼肉屋のアルバイトと肉体労働でモアイ像のような姿で現れるというところなのだが、そのままハッピーエンドになるかと思ったら、波乱の結末となったりする。

この作者には当時、「恋の街東京」という作品もあって、こちらは宮崎の田舎から上京してきた主人公が東京育ちの同級生たちに対抗してがんばるというものなのだが、両方ともebookで読むことができる。そこそこ面白いので、ご興味のある方はとりあえず立ち読みでもしてみたらいかがでしょう。


その後、環境問題に目覚めてしまった赤星たみこは、石鹸推薦まんがなどをお書きになっております。

[May 29, 2008]


あしべゆうほ「悪魔の花嫁」

「デイモスのはなよめ」と読む。1975年からプリンセス連載。

「がきデカ」で一気に少年マンガ界の主力にのし上がった秋田書店であるが、少女マンガ界では月刊誌プリンセスがなかなか伸びなかった。後に「エロイカ」がブレイクするまでは、この作品や青池保子の前作「イブの息子たち」あたりがメインであった。(ちなみに、「王家の紋章」は私は絵的にキライ)

はるか昔の神話の世界、妹の美の女神ヴィーナスを愛したために、兄のデイモスは悪魔とされ、黒い羽と角を与えられ天上界から追放された。そしてヴィーナスも生きたまま池の底にさかさ吊りにされ、すでに体の半分は腐ってしまっている。

妹を愛するデイモスは、ヴィーナスが人間界に生まれ変わった美奈子(みなこ)を殺して、その肉体をヴィーナスに与えることを思いついた。そして美奈子の前に現われるのだが、魔界に連れて行こうとするたびに何か事件が起こるというストーリーである。

大体は、美奈子に関わりのある何かの欲にとりつかれた人物が破滅していくという物語なのだが、そんなこんなでいつもデイモスの計画は頓挫してしまう。そして、生まれ変わりにもかかわらず、ヴィーナスは「いつまでもこんなところに私を放っておいて」と恨むし、美奈子はもちろん死にたくないから抵抗する。別人格なのである。

こんなストーリーをどうやって収束させるのかなあと思って見ていたが、いつもデイモスは美奈子を連れて行けずに次回へ続くとなる。結局、結末が示されないまま連載終了に至ってしまった。

落ちを考えずに連載をはじめるなといいたいところだが、結末まで行かないまま終わってしまったにもかかわらず名作と言われるのは、この作品あたりから始まった傾向かもしれない。同じような作品があるのだが、その話は次回にでも。


長期連載なので、最初と最後では絵柄が違う。この表紙は落ち着いてきた頃の絵。

[Mar 10, 2008]


亜月裕「伊賀野カバ丸」

昭和54年から別冊マーガレット(通称「別マ」)連載。別マは集英社系の月刊誌というジャンルでは「りぼん」と重なるが、マーガレットと別マは作者の交流がよくあるのに対し、りぼんとはあまりなかった。また、りぼんは付録があるので値段がちょっと高かった。亜月裕もマーガレットで描いたり別マで描いたりしていたと思う。

伊賀の山中で祖父(じっちゃん)の伊賀野才蔵に育てられたカバ丸は、祖父の死(じつは生きている)により東京で学校を経営している名門の大久保家に引き取られる。理事長である大久保蘭は、初恋の人である才蔵の若い頃に生き写しのカバ丸をかわいがるが、孫の麻衣は野生児のカバ丸が苦手である。

ある日、学園の影の支配者(笑)である目白沈寝を助けた(複雑骨折したのを焼きそばの皿で手当てした)ことから、カバ丸は学園間の紛争に巻き込まれる。何しろ忍者だから、相手の本拠地に忍び込んだり機密文書を盗み見たりするのは本職である。沈寝の腹心である野々草かおるとともに、大活躍をするのだが、というギャグまんがである。

この作品の良さはなんといってもノリの軽いギャグである。たとえば死んだはずのじっちゃんは実は生きていて、カバ丸を東京に出そうと死んだふりをするだけだし、カバ丸を厳しく育てたじっちゃんは実は変装していて、大久保蘭の前に現れるときにはロマンスグレーだったりする。

そして勉強は全然できないカバ丸(授業中は寝ている)なのに、じっちゃんに鍛えられた漢文だけは人並み以上にできたりする。金銭感覚もまったくないカバ丸は、沈寝に協力するかと聞かれて「お前、金あるか」と答える。10万か100万かと覚悟した沈寝にカバ丸が要求したのは「焼きそば10人前」である。

じっちゃん(カバ丸を鍛える方の)にそっくりの焼きそば屋のスーばあさんは、大久保蘭のライバル(と自分では言っている)で、カバ丸を見て、「なるほど才蔵の若い頃にそっくりじゃ。蘭ばばあが半狂乱になって引き取っただけのことはある」などと言ったりする。

この作品は当時実写映画化されて、才蔵が千葉真一、沈寝が真田広之、カバ丸をやったのは千葉真一の弟子、黒崎輝(ひかる)である。ちなみに、大久保蘭が朝丘雪路、麻衣が武田久美子、スーばあさんが野際陽子だから、まあ千葉真一ファミリー作品ということであった。

さらに20年の歳月を経て、作者はカバ丸の息子「こカバ丸」を主人公とする続編「伊賀野こカバ丸」を発表している。原作の登場人物がそれぞれ歳を取って再登場しているので、原作を読んだ人にはかなり面白い作品のはず。


乙女チック路線でなかなか芽が出なかった亜月裕が一気にブレイクした作品。じっちゃんこと伊賀野才蔵もラブリーでした。

[Apr 23, 2008]


池田理代子「ベルサイユのばら」

いま、上戸彩でリメイクしている「アタックNo.1」は週刊マーガレット連載であったが、それより一世代後に週マで人気連載となったのが「ベルサイユのばら」である。ちょうどその連載当時私は高校生で、女の子たちが大騒ぎで読んでいたので単行本を借りて読んでみたが、初めは大しておもしろくなかった。昔のことなので細かいところは覚えていないが、男装の近衛兵士オスカルと王妃マリー・アントワネットと北欧貴族フェルゼンと、パリの街で暗躍する「黒の騎士」とかが入り乱れる、ただの少女趣味(少女マンガなのだから当り前だが)の活劇にすぎなかった。

それが、物語の後半に近づくにつれて、異常に盛り上がってきた。単行本全7巻でいうと5巻くらいだったが、多分このとき、作者池田理代子には神が舞い降りたのだと思う。少女趣味の活劇が、フランス革命物語になってしまったのだ。ルイ16世やロベスピエールをはじめとする革命の志士、ちょい役でナポレオン・ボナパルトまで登場する。回し読みにあきたらず、週刊マーガレットを自分で買い始めてしまったくらいだ。

連載終了後も単行本が爆発的に売れ、遂には宝塚で演じられるまでになった後のことは皆さんご存知のとおり。あの連載から、早くも30年が経ったのだから驚く。その後(というよりほぼ同時期に)、少女マンガという異端の分野ながら今日でも通用する作者・作品が相次いで発表されたのだから、リアルタイムで見ることができたのは幸運だったと思う。

特にその当時特徴的だったのは、それまで代表的だったスポーツ根性もの(アタックNo.1は古いが、この時期「エースをねらえ」がやはり週刊マーガレットで連載)や不幸な生立ちや境遇にめげずがんばるもの(少女フレンド系の里中満智子が大御所。たいてい主人公が倒産するか目が見えなくなる)に対し、男装の女性(オスカルだ)や、女装の男性や、中性的登場人物、ホモセクシュアルやらバイセクシュアルが遠慮なく出始めた、ということだろう。その当時マンガの世界で登場したことが、いまのリアルな世の中で実現していることからみても、その先見性は評価すべきだと思う。

その意味で、この作品は先駆的ではないにせよ代表的な作品であるということができる。いまでも、何らかの手段で入手することは可能だと思うが、後ろから7分の3ぐらいのところから読むことをおすすめする。神が舞い降りる前の部分はストーリー的にも今一歩だし、絵柄も後半のものとは大分違っているからだ。

青い花さんよりのコメント

相当の思い入れの本ですので、ちょっと一言。「ぜひ皆様、始めからお読みください。でないと神が舞い降りたことを感じられません・・・。オスカルの成熟は作者の成熟です。蒼い時にもその魅力があるものです」
尚、テレビアニメとなったものもレンタルビデオ店にありますがあれはベツモノです。


もう、40年も前のことになってしまいました。私が少女マンガにはまるきっかけとなった本。この本と出会わなければ、おそらく違う人生だったのでしょう。

[April 25, 2005]


いしいひさいち「がんばれタブチくん」

いま朝青龍問題で連日テレビに出まくりの師匠高砂親方。「うつ病とか、よくわかんないんだよねー」とTVカメラに向かって言ってしまうおバカさん加減に各方面から非難が出まくりであるが、実はあれは昨日今日始まった話ではない。1970~80年代初めにかけて現役だった当時の朝汐(のち朝潮、もちろんいまの高砂親方)は、いしいひさいちの「ワイはアサシオや」ですでにギャグのネタにされていたのであった。

その「ワイはアサシオや」と同じく1970年代後半に発表されたいしいひさいちの初期の代表作が、「がんばれタブチくん」である。この作品は、野次を飛ばされると松明(たいまつ)を持って野次った人の家に火をつけに行こうとするタブチくんや、ボールに顔を描いて魔球と呼ぶヤクルト・スワローズのヤスダ投手や、何かあると選手にグランド十周させて八つ当たりするヒロオカ監督が登場する4コママンガである。

本物の方の田淵選手は、六大学のホームラン記録を打ち立ててドラフト1位で阪神に入団したスタープレイヤーであったが、その頃阪神は長期低迷期にあり、観客動員数は巨人に匹敵する人気球団でありながら成績はほとんどBクラスというていたらくであった。こうした中、入団直後から急激に太りだし豪快な空振り三振をかますタブチくんは別名「タブタ」と呼ばれ、ファンからは低迷の象徴とみられていた。

こうした背景からこの「タブチくん」は非常にウケた。現実の田淵選手と同様、79年に新設の西武ライオンズにトレードされたタブチくんは「竪穴式住居」こと西武球場(当時はドームではなかった)でも活躍を続けたのである。その西武はヒロオカ監督が来て日本一になるのだが、その頃には大学からのポジションキャッチャーではなく、ファーストとかライトとか、あまり守備に期待されないところにコンバートされていたのであった。

マンガの中では、奥さん(ミヨ子夫人=前の奥さんがモデル)が「勝てるように、今日はトンカツよ!」とせっかく用意した料理を、「トンが勝つ・・・私はブタということですか」と非常にひがみっぽいのだが、現実の田淵選手は非常におおらかで、当たると痛いといって内角のきわどいコースのサインは出さなかったそうである。そんな具合だから監督には向かなかったものの、コーチには向いているようで北京五輪チームの打撃コーチでがんばっている。

それでも、王貞治の連続ホームラン王を阻止したのはタブチくんだし、六大学のホームラン王記録は田淵の前には長島茂雄が持っていた。選手としては超一流で、にわかに太りだしたからといって非難されるにはあたらない。それはアサシオも同様で、現役時代無敵を誇った横綱北の湖(現理事長)に唯一勝ち越していた上位力士が朝汐なのである。

ご存知のとおり、いしいひさいちは現在朝日新聞の朝刊4コマを描いているが、いまでもヒロオカ監督に似た人やヤスダ投手に似た人が登場する。これはいまを去ること30年前のこの作品がルーツなのでありました。


朝日新聞でののちゃんを連載し、いまだ第一線で活躍中。タブチくんやヤスダくん、広岡監督を知る人も少なくなりました。

[Aug 13, 2007]


一条ゆかり「デザイナー」

74年2月~12月号にりぼんに連載された作品。りぼんというと、陸奥A子、太刀掛秀子、田渕由美子といったようなほのぼのとした作品のイメージがあるが、一条ゆかり作品はドロドロである。特にこの作品は、30年前の作品ではあるがフジテレビの昼ドラ並の粘っこさである。

主人公の亜美は孤児から売れっ子モデルにまで上り詰めたが、自動車事故でモデル生命を断たれてしまう。デザイナーとして彼女を使ってきたが、モデルができない体となったことを知るや笑いものにした鳳麗香(じつは亜美を捨てた実の母親)に復讐を誓い、謎の財閥御曹司結城朱鷺のもとでデザイナーとしての特訓を受ける。そして麗香のショーにぶつけて亜美のデビューとなるのだが、というあらすじである。

少女マンガの常として、実は父親、実は母親、実は兄弟、事故で再起不能、自殺、記憶喪失、どうみてもHOMOにしか見えない秘書などなどお決まりのパターンが続出し、物語は当然のことのように破局へと向かう。そうしたワンパターンが鼻につく人もいると思うのだが、私は彼女の作品の中ではこれが一番好きである。ドロドロな作風ならば、変に格好をつけないで行くところまで行ってほしいと思うからである。

本筋とはあまり関係がないのだが、結城朱鷺のバックアップのもと、亜美を一流のデザイナーとするため世界的な服飾専門家、色彩専門家、デザイナー、縫製専門家が招かれ、1ヵ月の間に亜美を本物にするための特訓が行われる。世界的というくらいだから、みんなフランス人である。セリフも横書きだから、たぶんフランス語で話しているのだと思う。ろくろく学校に行っていないはずの亜美が、なぜいきなりフランス語の読み書きができるようになるのか、よく分からなかった(いまでもよく分からない)。

今週のWSOP(World Series of Poker)レディースに参戦するYさん、あけみんさんが国内トップクラスのポーカープレイヤーに集中講義を受けているのを見て、この場面を思い出した。原作では、「この本のレポートを明日まで」「デザイン画をもう十枚」「この絵に色をつけてみろ」「○○カットを明日までに覚えて来い」などの宿題を連日出される亜美が寝ずにがんばるのだが、結局デビューにはゴーストライター(というのかどうか)の作品を使われてしまう。抗議に行った亜美に朱鷺はこう言うのだ。「1ヵ月で一流になれって言いましたよ。」

この作品が連載されているまだ若かった頃、こういうドロドロした世界にもあこがれたものだが、年とともにあまりこだわらない生き方に変わってきたような気がする。ときには、このくらいの魂のぶつかり合う世界もいいと思わないでもないが、いまの自分ではたぶん体力も気力も続かないだろうと思う。


一条ゆかりは大御所だけあって代表作が多いのですが、個人的にはこの作品とこいきな奴らでしょうか。なつかしいなあ・・・。

[Jun 25, 2005]


楳図かずお「肉面」

今年の夏は心配したほど暑くなくて、去年より電気代も安く済んで何よりだったが、昔は夏というと怪談や怪奇もののTV番組・マンガの特集が必ずあって、背筋を寒くして暑さに耐えたものだった。いまや、「四谷怪談」や「番町皿屋敷」なんてTVでもあまりやってないし(探せば時代劇CSなどでやっているのかもしれないが)、怪談に変わってホラーもの(意味は同じか)が主流である。

そして、怪談もののマンガといえば楳図かずおと水木しげるが双璧といえる存在であった。水木しげるが、「鬼太郎」を中心とする、ある程度体系だった妖怪たちを描いていたのに対して、楳図かずおはそれこそ無数のパターンの怪奇ものを描いた。

後に「まことちゃん」とか「漂流教室」などで人気作家となったが、それ以前は、そもそも楳図かずおの絵がこわいから見ないという人が結構いた。当時は「トラウマ」なんて言葉はなかったが、彼の作品をみて夜トイレに行けなくなった子供も相当多かったのではないか。

私はそんなことはなかったけれども(本当ですって)、初出から40年たって未だに忘れられない作品がこれである。確か20~30ページの短編なので、あらすじを説明するということが難しいのだが、文字通り、「肉の面」なのである。面というからには顔なのである。その面をどうやって作ったのかというと・・・。というわけで、たぶん題名から想像するとおりのあらすじだと思う。それを楳図かずおの絵だから、やっぱり怖い!

それほど昔の作品なので、もう読むことはできないのだろうな、と思って調べてみたら、eBOOKで買えるみたいですね。結構人気もあるみたいです。私はもう二度と読まないです。あと40年っていったらあなた、もう生きてません。

[Aug 23, 2005]


大島弓子「綿の国星」

昭和50年代に活躍した「少女コミック(小学館)」系人気作家の代表格として、萩尾望都、竹宮恵子に加えて大島弓子がいる。萩尾望都がSF系に優れた才能を持ち、竹宮恵子がストーリーテラーとして一流であったのに対し、大島弓子の特色はなんといっても「ファンタジー」である。

彼女の作品には、日常とはちょっとだけ違った(ずれた)世界が見え隠れする。それは実験用の薬を飲んで女性になってしまった男の子(ジョカへ)や、想像上の人物が現実とシンクロしてしまう世界(F式蘭丸)、政略結婚で他国に嫁がなければならない王女が男装して学園に現れる(すべて緑となる日まで)といった作品群からも分かるのだが、このまま精神世界的な方向へ行ってしまうのか(バナナブレッドのプディング)と思ったら、みごとに着地したのが「LaLa」連載のこの作品であった。

「LaLa」は「花とゆめ」系の月刊誌で、「花とゆめ」はもともと「マーガレット」(週刊誌)と「りぼん」(月刊誌)からトレードした作家による隔週誌であるから、集英社系(発行は白泉社)ということになる。その意味では「りぼん」と同じ月刊誌なのだが、「LaLa」はどちらかというと比較的高い年齢層をマーケットとして立ち上げられた。だから、私の記憶に間違いがなければ、創刊号の巻頭カラーは「日出処の天子」(山岸涼子、同性愛志向の聖徳太子が登場。これもまたそのうちに)のはずである。

「綿の国星」に話を戻すと、この作品の主人公は須和野チビ猫。つまりネコなのである。しかし、それまでのネコまんが(いなかっぺ大将から始まってWhat’s Michaelあたりが当時のネコまんがである)ではせいぜいヒトの言葉を喋るくらいが限界だったのに、この作品ではヒトの言葉はもちろん、顔かたちも人間なのである(耳としっぽはある)。

最初の作品では、「私は自分を人間だと思っているので、この姿で登場します」という注意書きがあるのだが、2回目以降ではそんな注意書きがなくてもすんなり読めてしまうから不思議である。物語は、ネコの世界(ホワイトフィールド伝説)と人間の世界(飼い主である須和野一家の話)がシンクロしつつ進行するが、それまでの彼女の作品がどちらかというと危ない方向に進んでいたのに対し、この作品ではファンタジーとして完成・完結したものとなっている。まさに、設定の勝利である。

作品発表は数年間に及ぶ大河作品であるが、一話ずつ完結しているのでそれぞれ読んでもそれなりに楽しめるのではないかと思う。ちなみに、私が好きなのは瑠璃動静(ラフィエル~これも猫~捕獲に命をかける詩人)と鈴木ブチ猫(チビ猫と一緒に、中央線沿線に「ペルシャ」を探しに行く)。


この作品は今でもファンが多いのですが、30年以上前なのでちょっとだけ。個人的には、「すべて緑となる日まで」も好きでした。

[Oct 17, 2005]

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