TAIPA号、再びテニアンで奮戦 (ポーカーの奥深い世界第15話) [Feb 25, 2006]
2月19日日曜日、現地時間午後4時、いよいよ残り10名による決勝テーブルの戦いが始まった。カシノ内に、決勝テーブル進出者と現在のチップ量がアナウンスされる。私の紹介は”Defending Champion”
である。光栄である。思わず、両手をあげてしまった。私のほかに、リゾカジ関係者は4人、ポーカー侍さん、あけみん姐さん、Mr.あんさん、BJさんである。他に日本の方でK氏、現地のコリアン系(よく見る茶髪のダンディ)1人、米国系2人、ポーカーニュースから台湾のTerry氏の合計10名がファイナリストである。チップ量合計17万点強のうち、すでに6万点近くを確保しているBJさんがダントツのトップ。あとは約20000点から5000点まで、ほとんど一団といってもいい状況で、私の持ちチップは1万4千点。ただし、ブラインドは400-800からで、下位の人でもまだまだ余裕がある。この時点で、私が考えていたこと、それは、どこかでBJさんをくずせないかということだった。
開始第1ゲームで、あんさんとTerryがオールインでぶつかり、TerryがAAで勝ち残る。この時点でTerryの持ちチップは3万点を超えた。その後は、淡々とした流れが続く。BJさんはチップリーダーの特権でたびたびレイズし、結果的にスチールを決めていく。最初苦しかったのは米国系のChris、あけみんさん、ポーカー侍さんだったが、それぞれ渾身のオールインを決めて挽回する。次のラウンドである500-1000が終了して最初の休憩となるまでほぼ5周回、そのまま9人が残った。
私は結局1ハンドも勝負することなく、BBで誰もコールしなかった2ハンドでブラインドが戻ってきただけだった。持ちチップはブラインド分減少して、次のブラインドを払うと10000点を切る。一方、トップを走るBJさんは目の子ですでに6万点を超えて、依然としてチップの寡占状態は続いている。ただし、流れを見ているとやや不安定なところがあり、いま勝負すればくずせる、という考えがしばらく前から耳の奥で聞こえる。問題は、勝負するにふさわしい手がこない、ということだった。
決勝に入った時点でBJさんと私のチップ量の差は4:1、現時点では6:1に広がっている。これ以上差が開くと、向こうのハンドが何であっても躊躇なくオールインにコールされてしまうだろう。もしかしたら、現時点ですでにそのシチュエーションかもしれないが、10000点というのはある程度抑止力にはなる。次のブラインドは600-1200、何もしなくても、そろそろ最下位に転落する。いよいよ決断の時である。
次のBBが来た。ミドルポジションにいるBJさんが確かメイク3000点のレイズ。そのまま誰もコールせずに番が回ってくる。ハンドを見るとQQである。勝負にならないのはAAとKKのみ。しかし、おそらくそういう手ではない。少しでも追いつくためには、ここで行くしかない。下りられてもいいし、コールされても五分以上の勝負である。「オールイン!」言ってから、「いま、俺のすべてを」と言い忘れたことに気がついた。
例によって、話は20時間ほど遡る。2月18日午後8時、いよいよ2006年春のテニアン・ポーカー選手権が始まった。私のテーブルは第4テーブルの5番、前回と同じく、カシノ奥側を背にした、ギャラリーにハンドを見られてしまう位置である。前回は席順指定であったが、今回はクリーンにくじ引きである。しかし、テーブルの面々を見て青くなった。
6番つまり下家にポーカー侍さん(前回5位)、4番つまり上家にめぇ社長(前回4位)と前回イン・ザ・マネーが両側。対面の1番にはポーカーニュース・チャイナ代表でオンラインでぶいぶい言わせているというポーカードクター(この人には、午後のサテライトトーナメントで飛ばされた)、さらに侍さんの下にはここのライブでいつも顔を合わせる現地の強豪、茶髪コリアンダンディもいる(この人、結果的に今回準優勝)。
この組合せは、正直言って辛すぎる。特に下が侍さんでは、中途半端に仕掛けることは命取りとなる。それに、めぇ社長には、これまで何度オールインで負けたか分からない。序盤戦は、大怪我をしないように慎重に行くしかないし、場合によってはリバイもやむなし、ともかくテーブルブレイクまで生き残りを最優先しよう、と覚悟を決めた。持ち点は3000点で、スタートは25-50。淡々と進む。めぇさん、侍さんともかなり仕掛けているが、私は行けない。Aとミドルカードとか、ローカードのペアは、残念ながらチェックorフォールドである。
次のブラインドはちょっと中途半端な50-75。このラウンドで、AAが来た。メイク500でみんな下りて、いつものようにカードオープン。このくらいのブラインドでは、ポットを大きくするより確実に1回上がっておきたいというのが、私の考え方である。だが、その後がなかなか来ない。次のBBで89が入り、フロップにQ-J-Tと入ってストレート完成。300ベットすると、ミドルポジションがコールしてきた。プリフロップで打って来なかったので、AKではなくAxかKQのような手が予想される。よし、ターンがragなら勝負だ!と思ったら、Kが落ちた。チェックしたら、当然大きくベットされ、フォールド。案の定、Aを持っていた。
ブラインドが上がって、75-150。次のゲーム参加は、KQs、スーツはスペードである。フロップでJ-T-9と出て、ベット。再度コールされたが、今度は上のストレートだからなんとかなるだろうと思ったていたらターンはA。それはいいのだが、ボードは全部黒。スペード、クラブ2枚ずつである。現状ではナッツだが、まくり目が大ありである。大きくベットして、下りてもらう。せっかくここまできて、リバーでまくられたくはないからだ。
リバイラウンドがここまでで終わり、100-200。そろそろ、ゲームアップの人が現れてテーブルバランスからテーブル整理となる。チップは原点近くだが、めぇさんがテーブル移動したのと、ポーカードクターが飛んでくれたおかげで、だいぶ楽になった。だが、下家の侍さんはまだいる。しかも、10000点近くにチップを増やしている。依然として苦しい戦いが続く。
6つあったテーブルが4つになった。このテーブルでは侍さんが1万点ほどでトップだが、他のテーブルではそれ以上のダントツでチップリーダーがぶいぶい言わせていた。いずれもリゾカジの、BJさん、Mr.あんさん、傍楽さんである。一方で、前回入賞者の2位の巨漢Mr.ダグラス、3位のtagaman、4位のめぇさんが残念ながらゲームアップとなっていた。
「次(に飛ぶの)は(前回)1位だな」と侍さんにジャブを入れられる。残念ながら、その前の参加ハンドAQoを勝てずに、チップ量は2000点近くに減少しているので、そう言われても仕方がない。しかしここで、QQが来た。もちろんレイズで入るが、リゾカジメンバーのヒロちゃんさんと現地の女性がコール。フロップ9-9-6、ターン6で全員チェック回り。そして、リバーは9である。
AA、KK、66がいるとは思えない。9持ちもおそらくいない。問題は、いくらベットするかである。あまり打って下りられたらもったいないのと、万一9とかを持たれている場合を考えて、500ベット。ヒロちゃんはチップ量がかなりあったのでコール、現地女性は不穏な空気を察知したのかフォールドした。この1勝で、4000点を超えてなんとか息ができる状態になった。
一方トップ争いは、侍さんがYuYuさんとの9000オールイン対決を制して一気に2万点近くに伸ばし、テーブル内でダントツのチップリーダーとなる。しかも5人というショートハンドの戦いとなって、長引くとやばい感じになってきた。幸い、それほど長引くこともなく21人目が脱落してくれて、午後12時を回る頃には初日のゲームが終了した。平均チップが7、8000点のところ4200点だが、ともかくベスト20進出である。
2日目のスタートは午後2時。上位20名の半分近くがリゾカジ関係者である。オフ会終了から時間がなかったので、やむなく「猫魂(NEKODAMASHI)」のTシャツでの参加となる。これが招き猫をカード押さえに使っているポーカー侍さんをえらく刺激してしまう。抽選の結果、またまた同じ卓である。チップリーダーのBJさんもいる。サテライトで圧勝したれいさんもいる。
この時間は、わりとハンドに恵まれた。1時間の間に、2度のポケットペアである。それも、1回目のKKオールインをKQ、2回目のTTオールインはJTと、それぞれこちらが有利な状況で受けてもらえたので、チップは一気に1万4千点に増えた。これなら、多少の打ち回しができそうだ、と思っていたら、予想外に早くゲームオーバーとなる人が続いた。最後は傍楽さんが11位で終わり、かなり有望な状況でファイナルテーブルに向かうことになったのである。
ほぼ10000点のオールインにBJさんは少考していたが、コール。ブラフではなかったらしい。でも、AA、KKでなければ少なくとも五分、ポケットペアのJJ、TTあたりなら圧倒的にこちらが有利である。今回ファイナルテーブルでは、カシノ内放映のためディーラーの上にカメラを置いている。その画面に入るように、2人のハンドが集められる。私はQQ、そしてBJさんはAKo。”All in!Defending Champion and Chip Leader”のアナウンスが入った。
想定した中では、最も手ごわい手である。それでも、わずかに私の方が有利。ここで勝てば、いよいよトップが見えてくる、と取らぬ狸のなんとか。フロップはすべてローカード。この時点で、勝率は75%に上昇した。正直なところ、勝つだろうと思った。流れ的にそういう感じだったからである。しかし、ターンを開くとK。逆に、95%負けである。リバーでもちろんQは出ず、無念の9位ゲームセットとなってしまった。
侍さん、BJさん、トーナメントディレクターと握手して、テーブルを立つ。勝とうと思って勝負したのだから仕方ないという思いと、何でチップリーダーに向かって行ってしまったのかなあという思いが交錯する。コールで入るべきだったかとも思ったが、フロップを見たらオールインだしおそらく結果は変わらないんだろう。それよりなにより、ファイナルテーブルに座ってからずっと、BJさんをまくってトップという構想しかなかったのが、やっぱり罠だったに違いない。
しばらくしてライブのテーブルが開いて、NOBUさん、めぇさん、makkooさんたちと参加する。前回準優勝のMr.ダグラスもいる。バイイン100で、ブラインド1-2のノーリミットである。開始数手でK5という手が入る。レイズが入ったがコール。フロップで4-6-7と来る。上の方から、ほぼバイイン額のオールインが入る。コール。向こうはAA、こちらはストレートドローである。ここで、ターンが3、リバーが8である。何もこんなところで、それも上にも下にも来る事はないのに。この分トーナメントで運が向いてくれたら良かったのに、と思った。
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その後、嵯峨野で夕飯となり、makkooさんたちとワイン3本をあっという間に空け、帰ってきたらトーナメントは決着していた。1位BJさん、2位茶髪のコリアンダンディ、3位あけみんさん、4位ポーカー侍さん、5位Terry氏であった。表彰式で賞を受け取る入賞者の方々に精一杯の拍手を送りつつ、ワインの酔いも手伝いトーナメントとは打って変わって、スーパールーズなプレイをしてしまう私でありました。
[Feb 25, 2006]