私はスロープレイが下手です  (ポーカーの奥深い世界第73話) [Sep 9, 2008]

WPJ5を制覇して世界のビッグトーナメントに進出したkopaさんが、本番のWPTでファイナル目前まで勝ち残り、大変名誉ある成果を残された。ポーカープレイヤーとして、まことにうれしい。うれしいはうれしいのだが、もしかしてWPJ5というのは、私も参加していたトーナメントである。

それにkopaさんといえば、昔テニアンポーカートーナメントでご一緒した仲間ではないのかと思うと、自分の不甲斐なさがひしひしとこみ上げてくる。このままでいい訳はないと思って、密かにスキルアップのためのいくつかの試みを始めることにした。最初の舞台は、8月30日に開催されたアウトサイダース・カップ夏の陣である。

アウトサイダース・カップについては前も書いたことがあるが、主催者のさいかさんがいろいろと趣向を考えてくれる面白いトーナメントである。今回は、「トーナメントらしく」専業ディーラーをローテーションしたリミット・トーナメントである。しかも1万点持ちだから、1時間くらいでは飛ぼうと思ってもそう簡単に飛ぶことができないのであった。

さて、秘策というのは二つある。一つは今まさにトライしている最中なので、この先いつか書くことがあるかもしれないが、今回は省略させていただく。もう一つは、スロープレイである。正直なところを白状すれば、私自身ここまでスロープレイをほとんど使わないでやってきた。なぜかというと、私の得意とする「玉砕オールイン作戦」とスロープレイは、両立させることがほとんど不可能だからである。

しかし、相手からより多くのチップを獲得しようと思ったとき、最初からオールインというのはかなり問題がある。というのは、相手がコールしてくれなければどうしようもないからである。こちらのプレミアムハンドはあっさりフォールドされてスチールと同じことになり、そうでない時に確実に取り戻されるとしたら、オールイン作戦はどこかの時点で破綻せざるを得ない。

一方で、勝負をフロップ以降に持ち込んだ場合、たとえ自分がAAを持っていたとしても有利であるとは限らない。というよりも、相手が勝負になると思うから追加のチップを出すのであって、もしかしたらすでに負けている可能性もある。例えばフロップが同じスーツ3枚の場合、相手のベットにコールorレイズできるのはAAの片割れがそのスーツである時くらいであろう。

さて、話をアウトサイダース・カップに戻す。開始から2時間余り。ブラインドは200-400、勝負どころである。持ちチップは少し減って8000点ほど。そろそろ仕掛けたいところである。ミドルポジションでA9をリンプイン。BBのやまかんさんがオプションレイズ。これをコールしてヘッズアップとなった。

フロップA35。やまかんさんベット、私コール。ターン、やまかんさんベット。第一感Aハイカードである。こちらはすでに2ペア、だから現時点では勝っているはず。しかし、やまかんさんの出したチップは800+400+800=2000点。ここでレイズして下りられてしまうよりも、リバーで(多分ベットするだろうから)レイズすれば、あと1600点入ってくると思って、コール。

リバーでノーピクチャーと声に出さずに呼び込むと、出てきたのは。やまかんさんベット。なんだかうれしそうだ。もしかして、A2でワンヒット&ストレートドローで打ってきたのかもしれないと悪い予感がひしひしと押し寄せる。レイズ予定を再びコール。やまかんさんのハンドは44。なんとリバーでセットを引かれていたのである。

結果的に、こちらがずるずるコールをしていたことになってしまった。同じテーブルのmarisukeさんには「2ペアだったらレイズしないと」と指摘されるし、やまかんさんからは「レイズされたら下りるつもりだったのに」と言われてしまう。結局、ここで大きくチップを減らしたのが致命傷となって、後はほとんどノーチャンスでゲームセットとなってしまった。

A9vs44のプリフロ勝率は45%:55%。これがフロップA35で74%:26%に逆転し、ターン9で84%:16%と拡大する。だから確率的にはAAvsAKを逆転されたくらいのレアケースが出てしまったとあきらめればいいのだが、レイズすればまず勝てたことは確実なだけに、余計なことをしてしまったという気持ちが強く残ったのであった。



そして1週間後の9月6日は、ストラドル杯である。スト杯は今年初優勝を飾っていることもあって、年間順位がいまのところ1桁である。あと3ヵ月いまのランキングを維持すれば、初めての年間決勝に進むことができる。がんばらなくては。

そして今回のスト杯は、序盤いいところでAAが入ったりフロップフラッシュができたりして、チップは10000点から15000点で推移、その後あまり無理をしなくてもファイナルテーブルにたどり着いた。

ファイナルテーブルでは、jumboさんがあばれていた。最近あまり一緒のテーブルになることがないのでなるべくぶつからないように見ていたら、オールイン対決で勝ったり負けたりしてチップが万単位で行ったり来たりしている。ぶつけるときは勝てる見込みが相当あるときでないと、勢いでやられてしまいそうだ。

残り6人になってブラインドは2000-4000。私はちょっと前にダブルアップし25000点ほどのチップ量でミドルポジション。jumboさんBBでチップは私より少し多い。いれぶんさん、いなばんさん二人が下りて、自分のハンドを見るとKKである。

ボタンのせりかっちを含めて、後ろに3人いる。レイズするのは簡単だが、みんな下りてスチールになってしまうのでは面白くない。誰かレイズしてくれないかなーと思いながら、「コール」。案に相違して、SBまでみんな下り。jumboさんもチェックである。

フロップJ75、一番恐いAが落ちていない。jumboさんチェックに私6000点ベット、jumboさんチップ量を確認してからコール。ターン。まずいな、ストレート目が出てきた。jumboさんチェック、私ちょっと嫌だけど「オールイン」、jumboさん「コール」、なんとハンドは68。ストレート出来上がりで、まくり目なしのゲームセットとなってしまった。

いなばんさんから、「プリフロのコールは相当いいハンドというのがみえみえだから、フロップでコールされた時に気をつけないといけない。ターン9ではむしろ撤退すべき。そもそも、最初から普通にレイズすべきでしょう」と指摘されてしまった。確かに、そのとおりのハンドが向こうに入ってしまったのでは言い訳のしようがない。

とはいえ最初にコールした時点で、フロップは相手がコールできるような小さめのベット、ターンでオールインというのが既定路線だったから、自分としては仕方なかったのかなと思う。フロップを見てチェックするのはこの時点で相手に役ができていなかった以上ありえないし、逆に大きくベットするのは最初からスチールするのと同じことである。

問題はターンでのアクションだが、ここはご指摘のとおりチェックかもしれない。するとリバーで打たれた時にどうするかが問題となるが、最後コールしたところで結果は同じである。それよりも、実はターンがドローで、リバーで引かれてしまったという場合にはかなり後悔するような気がする。

jumboさんはこの後もせりかっちとの99vs66オールイン対決で、ターンを出されながらリバー9でまくり返すという水際立った引きを見せて結局優勝した。こちらがKKの時に、1ギャップからストレートを作るくらいでないと、なかなか優勝までは難しいということなのであった。

それにしても・・・、私はスロープレイが下手だということがよく分かったのでした。

[Sep 9, 2008]

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