AriaでMaking Deal  ~ポーカーの奥深い世界第98話 [Jun 30, 2011]

ラスベカズも最終日となる6月19日、テレビニュースでは今週夏至(Summer)だというから、なるほど暑いはずである。

前の日にスナイパーさんと電話したときに、「せっかくベガスに来ているんだから、大きなイベントに出ないともったいない」という話になった。ところがシーザースのシニアイベントは満杯(大体、あの大きさで数百人規模は無理)で、仕方なくお嬢さんのダンスを見ながら参加したエクスカリバーのSTRIP POKERでイン・ザ・マネーを果たした。

せっかくいただいた$200を有意義に使いたい。調べたら、モンテカルロの北に新しくできたAria(アリア)というカシノで、トーナメントチップ15000点というラージスタックのデイトーナメントをやっている。エントリーフィーは$200+30。おお、いただいた賞金とぴったり。

というわけで、この日の予定は午前9時からエクスカリバーのモーニング・トーナメント、午後1時からAriaのトーナメントに出て、午後7時からはオーリンズでHORSEのトーナメントに行ってみようという予定を立てたのである。

朝食は例によってバフェ。何回もバフェに行っていると、好きなものだけ適量とってすませるようになる。デザートは甘すぎてノーサンキューだし、コーヒーは薄い。この日はカービングステーションでハムとオニオン、チーズの入ったオムレツを焼いてもらい、あとベーコン、サラダとオレンジジュースの朝ごはん。日本にいるとあまり好きではない卵料理だけは、アメリカではおいしいと思うから不思議である。

モーニング・トーナメントはいつものように休憩まで粘ったものの(800-1600ラウンドが終わると休憩で、ここまではリバイできる。昔の上野のSTEPSと似ている)、ファイナルテーブル直前でATvs66を引けずに終わる。昨日から続けて来ているのでスタッフにも顔を覚えられて、”Bad Luck”となぐさめられる。ひと休みして、Ariaまで歩く。

Ariaのポーカールームはリングゲームとトーナメントではフロアが分かれていて、トーナメントはDeuceという20テーブルほどの別コーナーで行う。こちらの方が正面入り口に近いので、最初はここのポーカーテーブルは客もスタッフもいないのかと思ったが、奥にリングゲームテーブルと受付、キャッシャーがある。$230を支払って、先ほどのひと気のないコーナーで待っていると1時になったらちゃんと人が集まってきた。

見回すと5テーブルのスタート。ここもリバイがきくので最終的には58人参加となった。イン・ザ・マネーは5着である。

目の前に配られたチップは15000点。もちろんラスベガスでこんなラージスタックでプレイするのは初めてだし、日本だって10000点のAJPCメインイベントくらいである。25-50から始まる1ラウンド。それでもこちらのことだからがんがん打ち合うのだろうなと思っていたら、案の定メイク5000点だのオールインだのが飛び交う乱戦となった。





MGM  Mirage系の新カシノホテル、Aria。銀色に輝いています。

私のように前半戦抑えていこうなどというプレイヤーは10人のうちあと2人くらいで、残りは3000点持ちのトーナメントのように荒っぽいやり取りとなっている。

中心となっているのは私の3人ほど左の見た目東洋系の若い兄ちゃんで、明らかなノーハンドスチールやブラフのビッグレイズでチップを集めている。すごかったのはレイズをBBにコールされてフロップ244。BBがKKでビッグベットしたのをオールインで切り返し、コールされたら出てきたのが24だった時である。

そんな彼が3つ左、つまり私がボタンとかカットオフの時にBB、SBだったりするから(テーブル移動があるので2人左だったり隣だったりする)、おちおちスチールもできず、ずっと下りていた。とはいえ、これは私の芸風なのであって、下りるのに苦痛は感じない。むしろボタンで甘いプレイをする奴と思われなくてよかったようである(なにしろ、BBではすべてのハンド1000点上乗せなのだ)。

75-150の3ラウンドまでの1時間半に、実質参加したハンドは1手のみ。これはBBで89、メイク300点くらいなのでコール、フロップ367をオールチェック、ターンでストレート完成してここをコール。リバーはフラッシュ目があったのでここも2000点打たれたのをコール、相手はTのペアでめでたくファーストポットとなり、おまけに手持ちチップ量は20000点に増えた。この時正直な感想は、リバイすると思えば5000点は遊べるなということであった。

アンティ50・300-600の6ラウンドでは、その機会が訪れた。ボタンでハンドはAK。BBはちょっとプレイの甘い白人女性。コール何人かで回ってきたのでメイク2000のレイズにコールしたのはBB女性のみ。フロップとスモールカード2枚にBBが3000点ベット、ここはコール。ターンもスモールカードでここまでダイヤ3枚。ここでBBが6000点くらいのオールイン。

しかしこちらはトップヒットトップキッカーなので下りる訳にはいかない。女性のチップ量をみると負けても10000点くらいは残せそうだ。ちょっと想定よりは多いけれどコーってみた。そうしたら出てきたのはスモールカードのワンヒット&ストレートドロー。結局リバーもダイヤで私のKdが効いてフラッシュ。これで原点の倍の30000点となった。

女性には"Nice Hand"と誉められたが、スモールカード2枚のワンヒットの段階で打ってくるのはさすがに本場である。2回目の休憩を終わって4時半の時点で原点2倍の30000点は上出来で、このまま黙って見ていても1時間半先の休憩まで残ることは可能である。しかしそうなると7時スタートのオーリンズは難しくなる。本場のHORSEを経験するのは非常に楽しみだったのだが、まさかここまで善戦しているトーナメントを半端に終わらせることもできない。

そして実際、次の3ラウンド(アンティ200・800-1600まで)もほとんど参加できず、チップは2万5千点ほどに減ってしまったものの次のラウンドに進めてしまったのである。ここまで9ラウンド4時間半で、AAからTTまでのハイペアは一度も来ず、99はコールしてヒットせず下りた。残りは2テーブル。テーブルチップリは東洋系のお兄さんで10万点近く持っている。すでに6時半、オーリンズは諦める他はなさそうだ。

10ラウンドはアンティ300の1000-2000。もはやハンドなど待ってはいられない。スチールでも何でもする覚悟である。と思っていたら、ボタンでKK到着。BBが例の東洋系兄ちゃんだったので、小さくメイク5000でレイズ。しかし何かひっかかったのか珍しくあっさり下りてしまった。これでともかく30000点回復。

ピンチは11ラウンドに来た。再び2万点ちょっとに減って、77が来たのでオールイン。ここは東洋系に受けられて、出てきたのは99。15位でゲームオーバーかと思ったら、フロップ7が出て20%を逆転、命拾いした。

結局この日はスチールしたKK以外ハイペアが一度も来なかったけれど、まあこういうところに運を使ったと思うことにしよう。ともかくここで4万点を超えた。ファイナルテーブルまであと少しである。7時スタートのナイトトーナメントも始まり、にぎやかになった。





Ariaのエントランス。ちょっと見にくいですが建物の周りは噴水です。ストリップから300mほど入るためか、タクシーがあまり来ていなかった印象でした。

ゲームオーバーを逃れたすぐ後でファイナルテーブルとなった。ファイナルともなれば20万点近く(1000点チップを200枚)集めている人もいる。何せ総チップ量は90万点近くあるのだ。私のチップは現状4万点あって8番目か9番目だけれど、ダブルアップを2回くらい続ければ十分に勝負権はあるし、まだまだ10BB以上あるので粘れるのは心強いところである。

しかし逆にいうと、黙って見ていれば差は開くばかりである。再び2万点近くに減ることになればスチールさえ効かないことになる。しかし相手方にすれば、現状近くでダブルアップすればほぼ10万点でせっかくのショートスタックがまた浮上してくるから、チップ持ちにとっても厄介なはずである。そして席順引き直しで今度は東洋系の左隣が私となった。癖が分かっているだけにやりやすい。

そして12ラウンド、再び東洋系との直接対決となった(ちなみに、東洋系のように見えるのは顔だけで、現地の人)。向こうがSB私がBBで、全員下りて東洋系がオールイン。こちらのハンドはKJ。傾向からみてエニーハンドオールインだし、仮に先ほど同様に99だったとしても2オーバーでじゃんけんになる。それより大きな手ではオールインしてこないはずである。ここはコール。

すると「コールするとは思わなかった」と一言あって出てきたのはA2o。コールされたとたんに、半分以上の勝率はないハンドである(テニアンでは私自身これでコーったが)。あっさりエースで負けだったのだけれど、フロップでJが出て逃げ切る。実は全く根拠はなかったが、コールしたら勝てるだろうという予感があった。この時点で私は6万点を超え、東洋系はこの負けが響きすぐ後にゲームオーバーとなった。

この後もう一人飛んで6人になったところで、周りがちょっと騒がしくなった。チップを一杯持っているヒスパニック系に見える太っちょが私にイヤホンを外すようにジェスチャーし、「あんたもバブルになりたくないだろう」と言った。よく聞いてみると、ハウス公認でバブル賞金をプールするので、$50出さないかということなのである。つまり、5着賞金が$450に対し、6着賞金が$300(ハウス公認なのでここから税金手数料が引かれる)ということらしい。

この時点で5位なのでこれは望むところ。フロアーから、”Do you know what this mean?”(どういうことか分かりますか?)と聞かれたので”6th paid.”(6着払いでしょう)と答えると”That's right.”と頷いたので、私の理解で間違っていないのだろう。ともかく$50出して、安心してゲーム再開である。

とはいえ、バブル救済ファンドでは胸を張ってイン・ザ・マネーとはいえない。それにまだ5万点近くあって、現状6位は2万点ない。何よりもハンドが全然来ない。という訳で、12ラウンドの残り15分は延々とアンティとブラインドを払い続けた。ショートスタックが1回スチールを決めて差は縮まったがまだ5位。こんなタイミングというのに、チップ持ち同士がオールイン&コールしたりするのだから、待機作戦も全く望みがない訳ではない。

そうこうしている間に12ラウンドが終わって4度目の休憩となった。すでに8時。オーリンズのレイト・レジストレーションもエクスカリバーの8PMトーナメントも難しい。これが遠征最後のトーナメントになりそうだ。

テーブルに戻ってみると、ファイナル開始時にチップリだったプレイヤーが、スマートフォンを電卓にして何か計算している様子である。どうやら、先ほどのオールイン&コールで上位のチップ量が平均化したので、ディールという話になっているようだ。

一人は戻っていなかったが、「彼は文句言わないと思うよ」と言っていたので、最初のチップリとヒスパニック系は知り合いのようである。私のオファーは9.25%、計算すると4着賞金よりも上なので、全く異存はない。ともかく、飛ばないでゲームを終えるのは優勝と同じである。

戻った一人もすんなり合意して、全員握手してMaking Dealとなった。見るのは何回かあるが、参加したのは初めてである。この後キャッシャーに行って手続きし、税金・手数料差し引きの$891を獲得。ハウスへの支払いもしてあると言われたけれど、キャッシャーに$20置いてきた。これで2晩連続してイン・ザ・マネー、それもディーブスタックというのがうれしい。

ポーカーの先輩でWSOPシニアで4位入賞したakiさんからが、以前ラスベガスでご一緒した際にこんなことを言われた。「ねえtaipaさん。最近はみんなWSOPにいきなり出るけれど、私の考えは少し違っていて、最初は小さなトーナメントにたくさん出て、それで勝てるようになったら大きなカシノのデイトーナメントに出る。それで実績を積んだらWSOPというのが本当だと思うよ」

そしていろいろなホテルのデイトーナメントに連れて行っていただいたのだけれど、わずかな回数とはいえラスベガスに何度か来てみると、akiさんのおっしゃった事が段々よく分かるようになってきた。おそらくそれは、ポーカーを長く楽しむための順番なのである。それが分かりかけただけでも、今回の遠征は有意義だったといえるのではないかと思うのである。

[Jun 30, 2011]

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